2011.8.3 シリーズの箸休め 【花と流れ星】
評価:3
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■ヒトコト感想
霊現象探求所の真備シリーズの短編集。京極夏彦の京極堂シリーズ的な印象をもっていたが、本作はよりライトに、心霊というのをあまり前面に押し出してはいない。そのため、シリーズのキャラクターを使いながら、良い意味で軽く読める作品に仕上がっている。長編のように長い前フリがなく、いきなりミステリーの謎が登場してくる。興味深いものもあれば、なんてことないのもある。すべてに何かしらの結論がでてはいるが、納得できないものもある。ミステリーとしての驚きよりも、このキャラクターたちの行動を楽しむべきなのだろう。真備はいつものように、簡単に謎を解明し、道尾はあたふたと狂言廻し役が似合っている。本作はシリーズの箸休め的役割なのだろう。
■ストーリー
死んだ妻に会いたくて、霊現象探求所を構えている真備。その助手の凛。凛にほのかな思いをよせる、売れないホラー作家の道尾。三人のもとに、今日も、傷ついた心を持った人たちがふらりと訪れる。友人の両親を殺した犯人を見つけたい少年。拾った仔猫を殺してしまった少女。自分のせいで孫を亡くした老人…。彼らには、誰にも打ち明けられない秘密があった。「流れ星のつくり方」「花と氷」ほか、人生の光と影を集めた五篇。
■感想
何かテーマがあるわけではなく、シリーズのキャラクターたちが不可思議な現象に遭遇する。それを解決するのは、なぜかすべてを知り尽くしている真備だ。「流れ星のつくり方」は、シリーズの作品というよりは、作者独特のうまさが表れている。ある一つの出来事に対して、傍観者として話を聞きながら、実はその語り手に大きな秘密がある。最初にラジオを聴いていたという流れから、なんとなく想像はできたが、それでも衝撃を受けるだろう。少年がなりたいと言った職業には、決してなれないというのがなんだか悲しくなる。
「モルグ街の奇跡」は何よりマジックのタネ明かしに注目してしまう。引っ張り方がうまく、その前に道尾がひたすら不可能だという前フリをしているあたり、物語を盛り上げるコツをしっかり抑えている。その後、マジックのタネがわかるくだりは、どうでもいいのかもしれない。スマートなタネを予想していただけに、この強引な流れには驚いた。頭の中でそのシーンを想像すると、ある意味動物に対する虐待なのではないかと思えてしまう。ありえない状況の答えを導き出すには、これしかないのだろう。
「花と氷」は表題の一部になっているように、インパクトがある。短編はあまり印象に残り難い場合があるが、本作の読後感は強烈だ。それも良い方にではなく、悪い方にだ。子供を持つ親であれば、何かしら思うことがあるだろう。人は辛いという気持ちが極限まで高まると、信じられないような行動を起こす。そのあとのことを想像する力は、もはやそこにはなく、ただ突発的に溜まりに溜まった苦しみを吐き出すための仕掛けなのだろう。物語としては最悪の結末にはならなかったが、後味はよくない。
「背の目」と「骸の爪」は読んでおくべきだろう。本作だけではキャラクターの印象が弱すぎる。
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