背の目  


 2011.1.7  京極夏彦と若干かぶる 【背の目】

                      評価:3
道尾秀介ランキング

■ヒトコト感想

どことなく京極夏彦作品に似た雰囲気を持った作品だ。心霊現象が発生し、それに関わる不可解な事件が起こる。その事件を解決するのは知識豊富な人物。これはまるっきり京極堂シリーズだ。作中にも明らかにその手の雰囲気を匂わす場面がある。ちょっとしたウンチクや小難しい話などもあり、さらには霊現象の説明まである。序盤から中盤にかけて、京極夏彦風な雰囲気を感じながらも十分楽しめた。さらには霊現象になんらかの現実的な答えが示されると思い、興味もわいてきた。それが後半になるとだんだんとテンションが下がっていき、結局よくあるタイプのミステリーということになった。霊現象は霊現象としてそのまま放置されているのがちょっと意外な終わり方だ。

■ストーリー

児童失踪事件が続く白峠村で、作家の道尾が聞いた霊の声。彼は恐怖に駆られ、霊現象探求所を営む真備のもとを訪れる。そこで目にしたのは、被写体の背中に人間の眼が写り込む、同村周辺で撮影された4枚の心霊写真だった。しかも、彼ら全員が撮影後数日以内に自殺したという。これは単なる偶然か?

■感想
霊現象探求所を営む真備のキャラクターが、ほぼ京極堂だ。本当の霊現象を求めるというキャラクターと、ホラー作家というコンビもそのままかもしれない。さらにはちょっとした特殊能力を持つ女性も登場し、キャラとしてはすべてそろっている。内容的にも不可解な事件といい、頻発する霊現象といい、興味をそそられる材料は多数ある。読んでいる間は、これらの現象になんらかの現実的な答えが示されるものと思い、ワクワクしながら読み進めていた。中盤まではページをめくる手がまったく止められないほど、先が気になって仕方がなかった。この引きの強さはかなりのものだ。

背中に目が現れた人物は、しばらくすると自殺するというおかしな現象。正直その背中の目の部分よりも、連続して子供が行方不明になる事件の方が恐ろしかった。小出しにされた謎と、ちょこちょこと登場する不思議な現象。歌川広重の東海道五十三次の絵が登場し、それらのウンチクが語られるなど、作者の知識の豊富さがうかがい知れる。このあたりは京極夏彦ほどマニアックでクドくはない。ただ、そこが物足りないと感じる人もいるかもしれない。読み方によっては聞きかじりの知識と感じるかもしれないが、分量としては調度良いように感じられた。

真備が最初に霊現象のカラクリを説明し、本物の霊現象を体験したいと語る。その流れでいくと、本作ではいかにも霊現象風であっても、結局現実的な何かがあるのかと思った。しかし、本作では意外にも霊現象はそのまま霊現象として扱っている。あれほど慎重に答えを探ろうとした真備があっさりと認めてしまうあたりが、期待はずれというか最後までそのキャラクターを貫いてほしかった。すべての現象が霊の仕業だとするのではなく、一部が霊の仕業で、あとは現実的な出来事となる。一番のメインである、タイトルにもなった背中の目についてだけは消化不良だ。

序盤の引きの強さはそうとうなものがある。




おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp