獄中記  


 2013.4.22     勉強が愉しい 【獄中記】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

作者が頭が良いというのは、ほかの作品を読んで気づいていた。が、それは作者本人に限る話かと思いきやそうではないらしい。本作は、獄中で弁護士や友人に宛てた手紙をメインに構成されている。国策捜査により逮捕された作者が、獄中でどのように過ごしたのか。

よくある堀の中の話としての食べ物の話題はほとんどない。あるのは、拘留中の環境の正確な描写と、独房の中が集中して勉強する環境として優れているということを熱弁している。普通の感覚とは違う、作者独自の考え方が怒涛のように襲いかかってくる。勉強できることが楽しいと感じるなんて、普通ではない。もしかしたら、大学の教授になるような人は、作者と同じような考え方なのかもしれない。

■ストーリー

外務省の元主任分析官で、2002年に背任・偽計業務妨害で逮捕された著者が、512日間拘置された東京拘置所内で記した日記に加え、同僚や友人、弁護士らに綴った書簡を収録する。

■感想
独房では集中して勉強ができるらしい。それも、持ち込める本の数が制限されるから、よりひとつの本に集中できるらしい。なんだかこの感覚が理解できない。勉強することが楽しい。外の世界では雑多なことに邪魔をされるから、独房の方が勉強がはかどるようだ。

なんだか仙人のように思えてくる。人といっさい関わりをもたず、ただひたすら自分の真理を追究する。自分が興味のある書籍を原書で読むために、外国語を習得する。それも、ラテン語やチェコ語など、およそ一般的ではない言語だ。なんだかカルチャーショックをとおりこして、驚愕しかない。

独房に持ち込める本の数が決まっているので、辞書を持ち込みそれを読みこむ。辞書を読むことが優雅な生活と考える作者の頭の構造を疑ってしまう。勉強というのは、嫌なことを我慢してひたすらやり続けることかと思いきや、自分の興味があることについては、寝食を忘れて没頭するらしい。

作者のこの独房での生活というのは、なんだか強烈すぎて、ごく普通の一般人では参考にならないだろう。もし、独房に入るようなことがあったとしても、作者のような生活はできないと断言できる。

衝撃的なのは、知的水準の高い作者の周りには、同じような友人が集まっているということだ。作者が友人に宛てた手紙で、おすすめの本を紹介しているのだが、それがまたかなり高度だ。作者の主義主張とロシアでの活動の話などは「国家の罠」や「自壊する帝国」の流れから外れることはない。

そんな知的水準の高い本作の中で、巻末の独房内の情報だけは、レベルが下がりホッとできるような雰囲気がある。思ったよりも自由に物が買えるのだという印象と、食べ物がうまそうだという、獄中の話では定番の印象はある。

作者の作品を読んでいると、自分が頭が良くなったような気分になるから不思議だ。



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