ZOKURANGER 森博嗣


2010.10.27  森博嗣は何でもありだ 【ZOKURANGER】

                     
■ヒトコト感想
作者だから許される領域というのがある。本作はまさに森博嗣だから許されるのだろう。大学内での准教授や助教たちがそろいもそろってヘンテコなコスプレをする。そこにほとんど意味はなく、必然性もない。ちょっとした悪ふざけの雰囲気すらある。物語として何が言いたいのかよくわからず、しいてあげるのならば、大学の研究や准教授たちの境遇について、ツラツラと不満をぶちまけているだけだ。元准教授だけあって、学内のシステムの矛盾や、研究と予算をどのように紐付けるかなど、生々しい部分もある。なんとなく本作だけ読むと、准教授や助教たちは日々面白おかしく過ごしているのかと思えてくる。ストーリーとして特別な何かがあるわけではなく、いつもの森博嗣作品だとしか言いようがない。

■ストーリー

研究環境改善委員会のメンバは五人。入れ替わりはなし。ずっとそのまま。ユニフォームの色も、決定済み。正義の部隊が噂になれば、悪事の抑制になる。訓練は怠らない。我々は人類の夢の上に成り立っている。五人揃って、ゾクレンジャ。

■感想
学内のある委員会のメンバーはまるでゴレンジャーのように赤、青、緑、黄色、ピンクのユニフォームを着る。それで何かをするわけではなく、抑止力としての存在らしい。それぞれのキャラクター目線で語られる本作。そこに何か意味を見出したり、ストーリー性を求めるのは厳しい。唯一、統一感があるのは、大学に勤務する准教授たちが日々どのようなことに不満を持ち、研究にはどういった意味があるのか、そして予算を取るために何をしなければならないのかが語られている。このあたりは現場の生の声が反映されているような気がした。

相変わらずキャラクターたちは、頭は良いのかもしれないが、一般常識に欠けるというか、常識がなく人としてのコミュニケーション能力から始まり、優先順位付けができていないような気がした。身近にいたらかなり困惑するに違いないキャラクターたちばかりだ。極度の合理主義というか、会話の内容にしても、無駄なことはすべて省き、疑問とそれに対しての答えばかりを語っている。これが作者の作品に登場するキャラクターの特徴といえばそうなのかもしれないが、久しぶりに読むとその奇特な性格に面食らってしまう。

五人そろってゾクレンジャということには何の意味もない。今までのZOKUZOKUDAMとキャラクターが多少リンクしているが、まったく意味がない。これほど好き勝手にできるのはもはや作者だけだろう。商業的にどれだけ売れるのかわからないが、過去の栄光にすがっているように思えて仕方がない。独特な雰囲気はそのまま、ストーリー性がない大学を舞台にした作品というのは、もはや作者の代名詞といえるかもしれない。それらが好きな人にはもってこいの作品だが、一般の人にはお勧めできない作品だ。

作者の熱烈なファンであれば読む価値あり。



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