ZOKU 森博嗣


2006.3.21 ホント、何がしたいわけ?だ 【ZOKU】

                     
■ヒトコト感想
作者の代表作でもありS&Mシリーズの犀川と萌絵を彷彿とさせるキャラクターが登場し、コメディチックな軽い作品に仕上がっている。S&Mシリーズが好きならば間違いなくはまれるだろう。重いミステリーでもなく誰かが死んだり、何かが盗まれるわけでもない。子供が遊びでやるような、ちょっとしたいたずらを大人ならではの大規模な方法で実行する。登場キャラクターが楽天的で楽しく、また挿絵によってそのイメージを膨らませることの手助けになっている。軽く読めるライトノベルだ。

■ストーリー

犯罪未満の壮大な悪戯を目的とする非営利団体“ZOKU”と、彼らの悪行を阻止しようとする科学技術禁欲研究所“TAI”。その秘密基地は真っ黒なジェット機と真っ白な機関車!平穏な日常の裏側では、やられた者が気づかないほどささやかな迷惑行為をめぐって、悪と正義(?)の暗闘が、今日も続いていた。

■感想
軽く読める。今までの森作品のように難しい技術的な話はほとんどない、かといって平凡な普通の小説というわけではなく森作品らしく科学の要素が盛り込まれている。小難しい原理をちまちまと説明することなく、大まかな概要を誰でもすぐに分かる言葉で説明する。暴走族をもじって暴音族だとか、暴振族などぱっとみてすぐにイメージがわくような分かりやすさだ。音でいたずらしたり、振動でいたずらしたり。分かりやすすぎる。

そのいたずらは、目的が一切分からず、ほんとに子供が理由もなくやるようなそんな感じだ。それを実行しているZOKUという闇の組織も分かりやすい悪役を演じている。ちょっと、とうがたったセクシーなロミ品川と、ちょっとどじなケン・十河。これってタイムボカンシリーズの法則だ。ドロンジョ様と手下みたいな感じか。

それに相対するTAIという組織も真剣なのかどうか分からないほど適当だ。S&Mシリーズの犀川のような揖斐。萌絵のような野乃。揖斐に恋する野乃。それに気づかない鈍感な揖斐。あまりに定番すぎて、いいのかこれでと思ってしまうが、森作品が好きな人にとっては大好物なのだ。

作者は自分の読者のことを良く分かっているようで、どんなことを書けば喜んでもらえるかが分かっている。本作にも確信犯的に盛り込まれた要素が多々あり、それを見つけてはほくそ笑むのが本当のファンなのだろう。



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