ZOKUDAM 森博嗣


2008.9.18  森博嗣だからこそ許される 【ZOKUDAM】

                     
■ヒトコト感想
前作ZOKUとは別物。同じキャラクターが登場するのだが設定から性格付けまでまったくの別物。世の中に影響でないほどの小さな悪事を働こうとし、それを防ごうとする正義。世間的に影響を与えないという意味では前作と同様だ。さらに言うなら本作の存在自体ほとんど影響はない。生粋の森博嗣ファンであるならば、それなりに楽しめるかもしれないが、それ以外の人にとっては…。軽く読めるのは良いのかもしれないが、軽すぎてまったく中身がないように感じてしまう。結局何が言いたかったのか。それは前作ZOKUでも感じたことなのかもしれないが、そういった意味では本作はZOKUに通じているのかもしれない。コアなファンにだけお勧めだ。

■ストーリー

え、私? 私が乗るんですか? このロボットに!? ロミ・品川とケン・十河が配属された、遊園地の地下にある新しい部署には、真新しい二体のロボットがあった。部署の扉には「ZOKUDAM」の文字が…。

■感想
巨大ロボットに乗り込み、悪と戦う正義の組織。言葉はかっこよく、男ならばちょっとは憧れるシチュエーションなのかもしれない。そんな組織においても、最初から華々しくロボットが動き出すわけでもなく、そこに至るまでには気の遠くなるような地道な作業が必要となる。最初はそんな感じでロボットアニメに対するアンチテーゼの作品かと思いきや、物語はドンドンよくわからない方向へと進んでいく。

まず、作品の設定自体がこれでもかというほど軽いために、作品自体に重みが感じられない。悪の組織対正義の組織という内容のはずなのに、いつのまにか、ちょっとした恋愛小説となっていたり、登場人物たちの軽快な会話を楽しむライトノベルとなっていたり。かなり作品として迷走しているような気がした。作者の前職での苦労を彷彿とさせるような開発者とのやりとり。実際この手のことはよく起きることなので、この部分だけは共感できた。「機器同士の相性が悪い」なんていう答えが通じるのはこの世界だけだ。

コアな森博嗣ファンならば許容範囲なのだろう。キャラクターの魅力というか、お気楽で軽めな会話。もしかしたらオタク心をくすぐる内容も含まれているので、大好物なのかもしれない。ただ、何も知らない一般人が突然本作を読んだとしたら…。かなり意味がわからないだろう。何が言いたいのかまったくわからない流れと、ありえないようなキャラクターたちが動き回る作品世界。結局巨大ロボットはほとんど登場することなく、そこに至るまでの申し訳程度の葛藤が描かれているのみだ。

ミステリーでもなければ、コメディとも言えない。なんと言っていいのか…。森博嗣ファンのみ許される作品だろう。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp