2011.2.1 西太后のイメージ一新 【中原の虹2】
評価:3
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■ヒトコト感想
1巻の流れでは、このシリーズの主役は間違いなく張作霖とその子供である張学良かと思っていた。それが本作に限って言うとそれほど活躍はしない。メインは蒼穹の昴で強烈なインパクトを放っていた西太后だ。清の行く末を案じながら西太后がある決断をする。歴史的事実の裏側を作者独自の考えで描いているが、かなりドラマチックな物語となっている。西太后が悪女と思われている理由や、清の国力が弱まった理由なども描かれている。すべてが完全なる事実とは思わないが、物語としては面白さがある。欲を言えば、西太后関連が重要なのはわかるがもう少し張学良のエピソードを増やしてほしかった。それはこの後、たっぷりと描かれるのだろうが、本作でも期待してしまった。
■ストーリー
半世紀にわたり、落日の清王朝を一人で支えた西太后が人生の幕を閉じようとするころ、張作霖や袁世凱は着々と力を蓄えていた。死期を悟った西太后が考え抜いて出した結論は、自らの手で王朝を滅ぼすということだった。次の皇帝として指名したのは、わずか3歳の溥儀。その悲壮な決意を前に、春児は、そして光緒帝は―。
■感想
本作は清王朝の大きな転換期を描いている。張作霖や袁世凱はそれなりに登場するが、やはり本作のメインは西太后だ。清王朝の歴史にそれほど詳しいわけではないので、細かな部分はわからないが、結果はすべて歴史的事実に沿っているのだろう。ただ、そこに至るまでの西太后やその他の者の思いというのを、作者独自の解釈で描いている。そのため、一般的には悪女というイメージがある西太后が、本作では国のことを考え、心血を注いで国を支えた女という扱いになっている。この扱いは蒼穹の昴での扱い以上だ。
それにしても西太后が自らの手で王朝を滅ぼすというのは本当だろうか。そこにいたるまでの激しい悩みと、次の皇帝が指名されるまでの様々な駆け引き。ジャーナリスト目線で語られるパートもあるが、そこでも西太后の評価はすこぶる高い。蒼穹の昴を読んでいなければ気付かない部分もあるが、それにしても本作は様々なキャラクターが入り混じるので、頭の中を整理するのが大変だ。漢字が難しいというのもあり、すんなりと読み進めることはできない。この苦難を乗り越えなければ、面白さは味わえない。
張作霖と袁世凱は今後大きく動いていくのだろう。その伏線のようなものが本作にしっかりと描かれている。歴史に沿って描かれる本作は、歴史をそのままなぞるのではなく、その裏に隠された登場人物たちの思いというのがドラマチックに語られている。そのため、そんなこと本当にあるのか?とマンガ的な印象を持つ場面もある。ただ、知らず知らずのうちにのめり込み、さらには歴史も学べるという一石二鳥の作品かもしれない。
本作を読めば、まちがいなく西太后のイメージは変わるだろう。
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