2010.9.16 速水と作者の伝説 【ジェネラル・ルージュの伝説】
■ヒトコト感想
ジェネラル・ルージュの凱旋の外伝的作品。速水が伝説を作った出来事や、凱旋後の物語など、ファンにはたまらないものがある。速水という魅力的なキャラクターを主役にした短編なので、面白いのは確実だ。本作ではさらに作者である海堂尊のエッセイも含まれている。医者と作家という二束のわらじ状態の作者。どんな生活をしてどんな考え方を持っているのかがよくわかる。作中で叫ばれている作者の主張そのままに、様々な活動を精力的にこなしているのがよくわかる。単純に仕事量だけみると、とんでもないことのように思えてしまう。作者の人となりが多少なりともわかるのは本作が始めてかもしれない。短編3作と作者のエッセイが収録されたお得な作品だ。
■ストーリー
救命救急センター・速水医師の外伝が登場! 単行本に収録されたジェネラルの原点「ジェネラル・ルージュの伝説」に、新たに書き下ろした「疾風」と、その後の物語「残照」も収録!
さらに、文庫用に大幅加筆したエッセイや、自作解説で、創作の秘密を惜しみなく明かされる。
■感想
速水が主役の短編なのでハズレはないことがわかっていた。あの強烈なキャラクターの基本となる出来事。ひかりの剣ではマジメでソフトなイメージがあったが、伝説を作った出来事では、強烈なリーダーシップと他を圧倒する存在感がある。これが研修医時代に行われたことだということに衝撃を受けざるお得ない。本作には速水が去った後の救命救急センターのその後も描かれている。佐藤部長代理が速水ほどとはいかないが、独自の色をだしながら救命医療に奔走する。後日談的なものは余韻があり、速水のキャラクターがより強く浮かび上がったような感じだ。
速水がらみの短編とは別に、本作は作者のエッセイが含まれている。それも作品がどのようにして生み出されたかが描かれている。ブレイクしたチームバチスタの栄光から始まり、最新作まで。作者の速筆もさることながら、兼業作家としてのハードワークには圧倒される。各地でAIに関しての講演を繰り広げながら、AIの検討会などにも参加し、本業である病理医としての仕事もしながら、ものすごいペースで作品を量産し続ける。いったいどこにこれほどのパワーと時間があるのだろうか。強烈なインパクトを残す作者の活動内容だ。
作者のエッセイを初めて読んだ。思っていたよりも自己主張が強いのだと感じた。作中で声高に叫ぶかわりに、実物はソフトなのかと思ったがかなり辛らつな言葉もある。AI関係の報道をニュースで見たとき、小説作品とリンクするなぁと思っていたら、実は作者が仕掛けていたということにも驚いた。一作家にこれほど力があるのかと驚かされ、ベストセラー作家はやはりすごいのだと改めて思った。次々と作品を生み出す際に、何日で書き上げたという文字を見て驚き、やはりどこか凡人とは違う何かがあるのだと思わずにはいられなかった。
作者の人となりがそれなりにわかる作品だ。
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