白蛇教異端審問 


 2010.2.8  イメージどおりの作者だ 【白蛇教異端審問】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
桐野夏生のエッセイ集。日記的なものもありながら、作者の知られざる一面が明らかになる。この手のエッセイで作者の作品と、作者のパーソナリティの違いを感じたり、親しみを感じたりもする。本作ではまさにイメージどおりというか、OUTの作者と言われて納得できる内容となっている。どこか怖くて、近寄りがたく、気難しいようなイメージ。特に表題にもなっている白蛇教異端審問では、作家として何ひとつメリットがないにも関わらず批評家と対決している。ここまで正直に自分の意見を言うのはかなり勇気がいることだろう。このあたりでも、作者の強烈なこだわりというものを感じることができる。普通のエッセイと比べると多少読みにくいが、作者の主義主張がはっきりと現れているエッセイだ。

■ストーリー

直木賞受賞直後の多忙な日々を綴った日記や書評、映画評、いわれなき中傷に対して真摯に真っ向から反論する表題作となった長篇エッセイに加え五篇のショート・ストーリーも収録。デビュー以来十年の軌跡をまとめ、小説では味わえないストレートな「桐野夏生」の魅力がぎっしりと詰まった著者初のエッセイ集。

■感想
「OUT」や「柔らかな頬」を読むと、どうしても作者のイメージというのは、怖くて近寄りがたい女性となってしまう。日記や書評や映画評にしても、個性がバリバリとでている。エッセイを読んで、作者のイメージが変わるというのはよくあることだが、本作に関して言えば、イメージそのままだ。雑誌に掲載された煽り文句に対して編集部に抗議し、書面で謝りの文章まで送らせる。日本人的なナアナァの関係というのをとことんまで嫌うような性格に感じられた。その頑固さは貴重であり、敵も多く作ることだろう。しかし、作者はそのスタンスを貫くようだ。

白蛇教異端審問では、まさに自分の作品だけが批評され、反論する場がないことへの苛立ちを現すように、批評家への反論が描かれている。作家というのは、常に批評される立場にあり、その批評に対しての反論は難しいのだろう。作者はそのことに諦めるのではなく、しつこく反論の場を探し続ける。作者独自の理論で反論し、強烈なインパクトを残している本作。ただ、普通の作家なら見て見ぬフリをするところを、決して許せなかったのだろう。この強引なまでの自己主張は、どことなくミロシリーズに通じる部分があるような気がした。

エッセイとして作家のパーソナリティが垣間見えたのはよかった。主婦としても作家としても生きる作者。正直言えば、作者は結婚していないと思っていた。勝手な想像では、独身女性というイメージがあった。それは作中のどこか欲求不満な女性像を、勝手に投影していたのかもしれない。年齢的なものや、作者の家庭環境によって作品のイメージが変わることはない。ただ、情報としては何らかの影響はあるだろう。決して親しみやすくはならず、より近寄りがたくなったというのが本音かもしれない。

この頑固さが作品のクオリティとなっているのだろう。



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