OUT 上 桐野夏生


2009.12.2  平凡な主婦たちの凶行 【OUT 上】

                     
■ヒトコト感想
久しぶりに先が気になって仕方がないミステリーを読んだ。なんでもない主婦がある事件を引き起こす。様々な関係者が一見つながりがなさそうで、かすかに事件に絡んでくる。多数の登場人物をしっかりとシンプルに描き分け、読者が混乱しない工夫も施されている。いったい事件はどうなるのか。良い方向へ向かわないのは想像できるが、その過程が気になってしまう。主婦たちの関係性とその周りにいる様々な人々が張り巡らせる伏線。四人の主婦たちには共通して陰鬱な雰囲気がある。それが下巻で晴れるのか、もしくわ、より凄惨な方向へ向かうのか。上巻で準備された数々の前フリをすべて下巻でうまく処理できるのか。ここまでは申し分がない、すばらしいミステリーとなっている。

■ストーリー

ごく普通の主婦であった彼女たちがなぜ仲間の夫の死体をバラバラにしたのか!?深夜の弁当工場で働く主婦たちは。それぞれの胸の内に得体の知れない不安と失望を抱えていた。「こんな暮らしから抜け出したい」そう心中で叫ぶ彼女たちの生活を外へ導いたのは、思いもよらぬ事件だった。なぜ彼女たちは、パート仲間が殺した夫の死体をバラバラにして捨てたのか?

■感想
ごく普通の主婦たちがある事件を引き起こす。深夜の弁当工場で働く主婦たちを、ごく普通の主婦だとは思わないが、それでも異常性は感じられない。女たちが事件を引き起こすきっかけというのは、いったい何だったのだろうか。家族との関係がうまくいかず、どこかちぐはぐな印象を与える主婦たち。物語全体を覆う、陰鬱な雰囲気。夜の弁当工場と、バラバラ死体が意味するものとは…。主婦たちに感情移入はできないが、同情心はわいてくる。そうせざるお得ない雰囲気が、どこかしこにも溢れているような気もした。

四人の主婦たちと関係のある様々な人物たち。事件とニアミスしながら、今後の物語の鍵となっていくのだろう。主婦たちが起こした事件にどのように関係していくのか。上巻を読む限りでは、多数の伏線と、ありきたりな展開とは程遠い流れ。そして、複雑に絡み合う人間関係。それらすべてを総合して考えると、一筋縄ではいかない終わり方になるだろう。強烈な引きの強さを持っている本作は、先の展開が楽しみで仕方がない。どのような結末になるにせよ、圧倒的な構成力で読者を楽しませてくれることだろう。

桐野夏生らしい主婦目線の作品。とくにおばさん目線というのは、作者のほかの作品からもすぐれているというのが容易に想像できる。冷え切った夫婦関係と、個人主義に特化した家族。そんな生活から抜け出すために行動を起こした主婦たちに、共感はできないが、物語としての面白さとしてはすさまじいものがある。リアルさがそうさせるのか、登場人物たちのキャラクターがすばらしいのか。それらすべてがあいまって、先の読めない物語が構成されている。大きなトリックや、あっと驚くことはないだろう。しかし、この主婦たちがどうなるのかは、気になって読まずにはいられないだろう。

上巻までのできはパーフェクトだ。あとは下巻がどのような結末を迎えるかにかかっている。

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