蒼穹の昴4 


2007.7.29 史実に沿った結末 【蒼穹の昴4】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
壮大な物語の完結編。現実にそった物語のため、ドラマチックなラストというわけではない。しかし、今までの登場人物がしっかりと活かされており、物語の完結にふさわしいできばえとなっている。ただ、少しだけ残念なのは、主役の二人の存在感が、他の脇役たちに負けているということだ。流れ的には文秀ひきいる変法派が実権を握るのが、すじのように思えたが、そうはいかなかった。中国の歴史に疎い自分が、これほどのめりこむことができるのは、ひとえに作者の筆力のなせるわざだろう。

■ストーリー

人間の力をもってしても変えられぬ宿命など、あってたまるものか―紫禁城に渦巻く権力への野望、憂国の熱き想いはついに臨界点を超えた。天下を覆さんとする策謀が、春児を、文秀を、そして中華四億の命すべてを翻弄する。この道の行方を知るものは、天命のみしるし“龍玉”のみ。感動巨編ここに完結。

■感想
では文秀と春児、二人の出世物語の序章のような雰囲気。では壮大な清という国で、どのように二人が登りつめるのかが描かれ、そしてでは衰退しかけた清という国をどのように立て直すか、ラストへ向かう地盤固めが描かれている。本作では清という国の結末が事実にそってしっかりと描かれている。物語をドラマチックにするためには別の結末もあるだろうが、本作はあくまで事実にのっとっているようだ。

本作の主役はいったい誰なのだろうか。考えると、その時々によって変わってくる。もちろん本作は、文秀でもなく春児でもない。しいて言えば、日本人の記者である岡であろうか。物語全体として、様々な登場人物が、しっかりと自分の役割をはたし、悪役と思わしき人物も最後までしっかりと存在感を保ったままだ。ある意味、事実にのとったからこそこの結末なのだろうが、少しだけ壮大なカタルシスを期待してしまった。

科挙や進士といった制度が、日本になく中国にのみ存在し、それをいつ捨てたのか。この制度が本作には最後まで根強く関わってくる。変法派が権力を握るという結末であれば、一番スッキリとするはずだが、そうではなかった。文秀と春児。清という国で上りつめた二人は、結局、
宿命から逃れることはできなかった

なんだか、最後は随分と寂しい終わり方のような気がした。



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