蒼穹の昴3 


2007.7.19 ラストへ向かう地盤固め 【蒼穹の昴3】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
今までとは異なり主役二人がそれほど活躍しない。代わりに清国を巡る周りの動きが活発になっている。国内での激しい権力闘争に明け暮れていると、外から外圧がひっそりとそして、確実に押し寄せている。西太后の側近にまで上りつめた春児。そして改革派の中心人物となった文秀。この二人の直接対決はないが、代理戦争のように周りは騒がしく動き回っている。歴史的事実を織り交ぜながら、特に日本に対しての描写が多く、時間的な移り変わりもはっきりとイメージできる。結末に向かうまでの最後の地盤固めのような感じだろうか。

■ストーリー

落日の清国分割を狙う列強諸外国に、勇将・李鴻章が知略をもって立ち向かう。だが、かつて栄華を誇った王朝の崩壊は誰の目にも明らかだった。権力闘争の渦巻く王宮で恐るべき暗殺計画が実行に移され、西太后の側近となった春児と、革命派の俊英・文秀は、互いの立場を違えたまま時代の激流に飲み込まれる。

■感想
西太后の絶対的な力強さは薄れてきているが、それでも春児の力は大きいようだ。大きな権力を持ちながらも、今までの春児以上に謙虚で思いやりに溢れる人物に成長している。対する文秀は切れ者という言葉がぴったりくるような、頭脳の明晰さと冷静沈着さを持ち合わせた人物に成長している。この二人の直接対決はないが、二人がしっかりと対面する場面はある。結末に至るまでの前哨戦なのだろうか。

今までの二作と比べると、本作は他国の状況が詳しく描かれている。清国を侵略する諸外国として英国と共に、大きな圧力として描かれているのが日本だ。中国の歴史に詳しくなくとも、日本の歴史と照らし合わせることで、実際の時代的流れを読み取ることができる。作中の中では頻繁に近代化に成功した日本を目標にするような描写がでているが、本当にそうなのだろうか。随分と
日本が過大評価されているような気がした。

最後の結末に向かって、激しい権力闘争にどのような決着がつき、二人はどうなってしまうのか。壮大な物語の結末に向かって、しっかりと地盤固めをし、一気にラストまで突っ走る準備をしているようだ。特に清国内部の深刻なほど衰弱した国力と、それを虎視眈々と狙う諸外国。それらからしっかりと守りきってきた今までの老人たち亡き後、二人はどのような行動をとるのか。

あとは結末まで一気に読み進めていくだけだ。

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