蒼穹の昴2 


2007.7.17 グイグイと引き込まれる面白さ 【蒼穹の昴2】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
前作が二人の主人公の地盤固めとすれば、本作は出世物語だ。政治の中枢へ進む文秀と、西太后に気にいられ、権力の中枢へ近づく春児。この二人がお互いの宿命を受け入れ、知らぬ間に敵対する関係へと発展する本作。単純な出世物語ではなく、そこにうごめく激しい権力闘争と、人とのしがらみ。二人の上りつめる姿を読み、ワクワクしながら、今後の予想だにしない展開にページを捲る手を緩めることができなかった。絶対的な権力者である西太后の裏の顔や、取り巻く人々の思惑。まるで広大な中国の国土のように大きく、先の見えない物語を十分に楽しむことができる。

■ストーリー

官吏となり政治の中枢へと進んだ文秀(ウェンシウ)。一方の春児(チュンル)は、宦官として後宮へ仕官する機会を待ちながら、鍛錬の日々を過ごしていた。この時、大清国に君臨していた西太后(シータイホウ)は、観劇と飽食とに明けくれながらも、人知れず国の行く末を憂えていた。権力を巡る人々の思いは、やがて紫禁城内に守旧派と改革派の対立を呼ぶ。

■感想
文秀と春児が向かう国の中枢にはいったいどのような魔物が潜んでいるのか。前作ではおぼろげであった国の中枢をつかさどる人物たちのエピソードから始まる。この巨大な国を代々動かしてきた皇帝たち、そしてその血筋を引くものたちと西太后の関係。壮大な物語にふさわしく、はるか昔から西洋人を含め、様々な人物が関わり、この国ができたという大きなベースが語られている。

巨大な国の中枢に入り込む文秀と春児。この二人の出世していく様は、読んでいてとてもワクワクし、興奮せずにはいられない。出世するにしたがって、二人の仲は本人たちの思惑とは逆の方向へと進んでいく。まさしく宿命のようなものを感じさせる流れだ。

本作は物語の中盤であり、最も重要な部分でもあるのだろう。権力構造が微かに変わりかけ、西太后の独裁から開放しようとする勢力と、守ろうとする勢力。この二つの組織にそれぞれ文秀と春児が別れるのも秀逸だ。さらには西太后をステレオタイプな悪女とは描かず、人間的で思いやりのある人物として描いているのも本作の特徴だろう。

歴史的事実を絡めながら、壮大な物語として成立させている。主人公の二人以外の人物も魅力的である。一つ気になったのは太白白の予言のくだりで、春児に対する予言はすべて嘘だという部分だ。恐らく物語としてはその言葉さえもなにか裏がありそうだが、最後までこの疑問が解けないのであれば、少し興ざめしてしまうかもしれない。

読み進めるほどに、集中し、目が離せなくなる。難しい漢字や読みにくい名前が多いはずなのに、いつの間にかそれらが気にならなくなっている。突然の場面展開や一人称の変化など、混乱するかと思いきや、一切そんなことはなかった。恐らくこれは構成のすばらしさとストーリーの面白さに
グイグイと引っ張られているからだろう。

早く続きが読みたい。

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