2006.8.21 あの頃の衝撃を思い出す 【沈まぬ太陽3 御巣鷹山篇】
■ヒトコト感想
今までの経営者との闘争やアフリカでの辛い生活は全て前フリだったのか。今回は今までとはうって変わって実際に起こった事件をリアルに再現している。日航機墜落という事実を多少脚色しているとはいえ、事実に沿った構成で描かれているのだろう。これが現実に起こったという衝撃とおぼろげながらでしか憶えていないが、飛行機の墜落というニュースを見たときの衝撃。その衝撃をまた思い出すような作品だ。1,2では主役だった恩地が本作ではほぼ脇役扱いで、主役はあくまで事故であり、それに関わった人々という流れになっている。
■ストーリー
十年におよぶ海外左遷に耐え、本社へ復帰をはたしたものの、恩地への報復の手がゆるむことはなかった。逆境の日々のなか、ついに「その日」はおとずれる。航空史上最大のジャンボ機墜落事故、犠牲者は五百二十名―。凄絶な遺体の検視、事故原因の究明、非情な補償交渉。救援隊として現地に赴き、遺族係を命ぜられた恩地は、想像を絶する悲劇に直面し、苦悩する。
■感想
前2作がどれだけ本作に関係があるかわからないが、今までとは明らかに違った雰囲気になっている。事故に至る経緯や原因など改めて知る事実が沢山あり、この事故が航空機至上世界最悪の事故だということも始めて知った。事故による被害者はもちろんのこと、加害者側である航空機会社側にもそれなりの苦労や苦難があり、一致団結して自体の収集に取り組んでいるというのが良く分かった。しかし今までの流れからか上層部は事なかれ主義を貫くことを第一に考えているようなそぶりも見えた。
ちょうど時期的に御巣鷹山に慰霊に訪れる人々のニュースなどがテレビで流れており、それを見るたびに本作はフィクションではなく事実として存在したのだということを認識させられた。偶然にもユナイテッド93という、これまた原因は異なっているが同じ航空機の不運を扱った作品に出会えることができ、それとの相乗効果で臨場感たっぷりに本作を読むことができた。
ある程度まで読み進めると、あとはひたすら遺族との保障交渉に関することに頁を裂いている。これは遺族の気持ちと苦悩を第一に表現したかったためなのだろうが、多少くどいようにも感じてしまった。全てと言わないまでも大多数の遺族をクローズアップして描かれているのでそのたびにそれぞれの遺族に対する気持ちが変るというのは実感できた。
御巣鷹山に墜落したというのがどれほどのことか、分かっていながらもあらためて文章にされると、その凄まじさをまざまざと思い知らされる。グロテスクな表現が多数出てくるが、それさえも事実として受け入れるしかない。
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