沈まぬ太陽4 会長室篇 上


2006.8.24 腐った企業の成れの果て 【沈まぬ太陽4 会長室篇 上】

                     
■ヒトコト感想
ムカムカするほどの権力闘争。御巣鷹山での大事故から必死に立て直そうとする人々がいるなかで、利権を離さまいと必死になる人々がいる。恩地の活躍というよりも様々な登場人物達が何のために、誰のために仕事をするかというのが浮き彫りになっている。半分ノンフィクションといわれている本作が本当にこれほどまで汚職にまみれているのかとても信じられないが、これが権力闘争と特殊法人の成れの果てなのかもしれない。

■ストーリー

「空の安全」をないがしろにし、利潤追求を第一とした経営。御巣鷹山の墜落は、起こるべくして起きた事故だった。政府は組織の建て直しを図るべく、新会長に国見正之の就任を要請。恩地は新設された会長室の部長に抜擢される。「きみの力を借りたい」。国見の真摯な説得が恩地を動かした。次第に白日の下にさらされる腐敗の構造。しかし、それは終わりなき暗闘の始まりでしかなかった…。

■感想
まず思ったのは、これだけ業務上横領を続けることができるのかということだ。簡単に多額の金を調達できる立場にいるのは分かるが、それをあっさりと私利私欲のために使う。そんなことができるのも厳しい民間企業ではなく国から守られた特殊法人の特性なのかもしれない。正直、こんなことが普通の企業でも横行しているようだったらマジメに働くのがバカらしくなってくるのも事実だ。

複雑な組合関係もちょっと理解できなかった。普通の社会人であれば組合をそれほど重視することはない。これほど組合に力を注ぐということはそれだけ末端の社員に対して多大な影響力があるからだろう。分裂した組合員同士のお互いの言い分は確かによく分かる。こじれた関係を修復しようとするのが難しいのも良く分かる。そんな組合間のギクシャクした関係をまざまざと思い知らされる場面も多々ある。

腑抜けた企業を立ち直らせるには強烈な劇薬でその組織に刺激を与えるしかない。日産のゴーン社長のように新たに登場した国見会長というのがその役割をはたすのだろう。昔ながらのワンマン社長風な雰囲気もあり、国見会長のやることが全て正しいとは思わないが、強大な権力を持った人間がリーダーシップをとって改革していくしか方法がないのだろう。

反吐がでそうな権力者の横領と、改革の難しさを露呈している作品だと思う。

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