ユナイテッド93


2006.8.20 何よりも衝撃的な真実 【ユナイテッド93】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
主役がいないからこそドキュメンタリーっぽくリアル感に溢れている。ユナイテッド93のパイロットや乗客、管制塔で指示する人物。それら全てに細かく描こうと思えばいくらでもドラマはできたと思う。しかしそれをあえてせずに淡々と出来事を時系列に沿って表現しているので、同時多発テロがまさに今、現在起こっていることのような臨場感を感じることができた。映像も8ミリで取ったような荒い映像なのでそれもリアル感をより増大させている。最後に墜落する場面では、アメリカ国民でなくとも心に響くものがあり、余韻も何もなくあっさりと終わる場面ではなぜか涙がこぼれそうになるのを抑えるのに必死にだった。

■ストーリー

2001年9月11日。ニューアークの空港は、朝の喧騒に包まれていた。離陸の準備を整えたユナイテッド航空93便は、40名の乗客を乗せ、サンフランシスコへ飛び立つ。その直後、ワールド・トレード・センターに2機の民間機が激突した。その頃、ユナイテッド93便の機内でも、テロリストが爆弾を持って操縦室を制圧。機内は混乱に陥るが、地上で起こっている事態を知った乗客と乗員たちは、わずかな武器を手に立ち上がった…。

■感想
これがリアルタイムでテロを見ていた者だけが分かる臨場感というものだろうか。何十年後、リアルタイムで経験していない人が見てもこれほど衝撃を受けることがないだろう。あの時、ユナイテッド93の機内ではこんなことが起きていたのかという衝撃。ある程度予測の上での映像だったり多少美化されているものがあるとしても、心にこびりつくようなリアル感はある。ヒーロー崇拝のアメリカらしい場面もいくつかあるがそれらが全て作られたものという感じがしないのもリアルな雰囲気が一役かっているのだろう。

ワールド・トレード・センターに二機目の飛行機が突っ込む場面では、その時の映像がそのまま使われている。管制塔での一瞬の静寂。そして電話口での会話「今、見ましたか?」それら全てが映画ではなく本当にリアルな現実として起こったことだとあらためて認識させられる。どんな優れた映画でもどこか作り物の印象はぬぐえない。しかし本作の場合は特別な演出がなくとも
911というテロが起こった事実を知っているだけに全てがリアルに思えてしまう。決してドキュメンタリーではないがそう思わせる何かがある。

ユナイテッド93が最後に墜落する直前。機内の有志たちが募ってコックピットを占拠しに向かう場面がある。果たして本当にそれだけの人が自分の命をなげうって向かったのだろうか?真実は誰にも分からないが、こんな部分は映画的演出が入ってもいいと思った。誰か一人がヒーローになるわけではなく、名もない一般人が自己犠牲精神の元にテロの首謀者達に突っ込んでいく。巧みなカメラワークでその混乱ぶりと必死さは十分伝わってくる。最後に地面に激突する直前まで必死いになっていたのは紛れもない事実なのだろう。

歴史的事実を後世に残すという意味では本作はかなり重要な位置をしめている。ただ単純なエンたーティメントというよりはドキュメンタリーとして見たほうがいいだろう。



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