2006.7.29 権威に対する反抗 【沈まぬ太陽1 アフリカ篇上】
■ヒトコト感想
組合員の待遇改善のために戦う恩地元。確かに正義感あふれ権威に負けずに立ち向かう姿は美しく感動するのだろう。しかし時代が時代なのだろうか今の時代に労働組合がどうとか言われてもいまいちピンとこない。会社との激しい交渉やそれによる不利な人事など。大手航空会社にコネ入社が多く非常に官僚的だというのは有名だが、それにしても同じサラリーマンとして感情移入できるかというとそうではなかった。カラチでの不衛生きわまりない場所での生活など読んでいてぞっとするが、どうしてもそれ自体は身から出たサビではないかと思ってしまう。単純に恩地を応援しながら読める気にはならなかった。
■ストーリー
広大なアフリカのサバンナで、巨象に狙いをさだめ、猟銃を構える一人の男がいた。恩地元、日本を代表する企業・国民航空社員。エリートとして将来を嘱望されながら、中近東からアフリカへと、内規を無視した「流刑」に耐える日々は十年に及ぼうとしていた。人命をあずかる企業の非情、その不条理に不屈の闘いを挑んだ男の運命―。
■感想
現役サラリーマンだからこそ思うことがある。これほどヒーロー的なことができるとは到底思わない。まさに空想の人物であり、現実味がわかない。たとえ同じような思想の人物が現実にいたとしても同僚としては扱いずらいと思うにちがいない。別に権威主義というわけではないが、それでも組合員の待遇改善にのみ邁進しているというよりも権威に対して反抗しているようにしか読み取れなかった。
自分ができないことを物語の中の人物がやってくれる。それを読みながら胸のすく思いで楽しく読む。これが本来ならば正しい読み方なのだろう。確かに仕事環境の不平等やコネ入社組みが良い待遇を受けるなどと聞くと怒りがこみ上げてくる。それに対して戦うのはすばらしいと思う。それらを改善するためにストまでもカードとして使いそして要求を通していく。ストをたてに迫られる経営者の方が弱い者のように思えて仕方がなかった。
家族を犠牲にしてまで海外出張をし、そして日本には母親を残しているというくだりがあったが、それさえも今のサラリーマンにとっては当たり前のように思えて仕方がない。時代的な問題なのだろうか。それとも作者自身がサラリーマンについて理解不足なのだろうか。サラリーマンとしての生活の考え方が甘いような気がしてならなかった。
今後どのような展開になるかわからないが、不正を暴くという流れであまりに自分の我を通しすぎるとそれが逆に敵に対して哀れみを誘うようになってしまう恐れがある。
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