羊をめぐる冒険 上 


2007.1.31 世界にどっぷりと浸かる 【羊をめぐる冒険 上】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
すべての事がらに必然性はまったくないように感じる。この出来事や登場人物がその後の展開に必要なことなのだろうか、そして耳専門のモデルである意味はどのようなことなのだろうか。気にすればきりがないことが沢山ある。現実的に考えることではなく、物語に入り込み、その世界へどっぷりと浸かることで新たな何かが見えてくるような気がする。羊にまつわる不思議なできごと。「僕」の周りで起こる出来事はダンス・ダンス・ダンスへ続くだけの雰囲気を持っている。

■ストーリー

1通の手紙から羊をめぐる冒険が始まった 消印は1978年5月北海道発あなたのことは今でも好きよ、という言葉を残して妻が出て行った。その後広告コピーの仕事を通して、耳専門のモデルをしている21歳の女性が新しいガール・フレンドとなった。北海道に渡ったらしい<鼠>の手紙から、ある日羊をめぐる冒険行が始まる。

■感想
羊をめぐる冒険にはどのような意味があるのか。キーワードである羊がどのような意味があって何を暗示しているのか、読み進めていくうちにおぼろげながらその形が見えてくる。羊というなんでもない動物に巨大な秘密を持たせている。単純に羊を探し出すだけが目的ではなく羊を見つける過程が大事であり、「僕」には羊が必要なのかもしれない。

耳が魅力的な女性や神を崇拝する運転手。そして右翼の大物。それらはどこか普通とは違う。普通に会話をして普通に生活しているように装ってはいるが、端々に感じる言動の不自然さと
根拠のない自信のようなもの。この不思議な世界でさらに輪をかけて不思議な人物たちが登場する。その中に入ってしまうと「僕」という人物がすごくまともに感じてしまった。

鼠と「僕」の関係。「風の歌を聴け」では感じることのできない強い絆というのを感じた。鼠を守るために自分が不利になろうとも決して口を割らない。「僕」の到底前向きな考え方とは言えない思考原理と行動。どこか人生に対してあきらめているような雰囲気。ものすごく奇妙なのは「僕」が何を目的に何をしたいから行動しているかだ。何もなければただ淡々とどこかで野たれ死んでも、それはそれで満足するような雰囲気を感じた。

冒険の佳境は下巻で待っているのだろうか。

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