2007.1.22 「文化的雪かき」が良い 【ダンス・ダンス・ダンス 上】
■ヒトコト感想
「僕」が直面するさまざまな出来事。普通の日常のようでありながらどこか歪んでいるような気がした。正体不明の不思議さと軽くユーモアが含まれた会話。不思議さはもはや定番となってはいるが、作者の作品を読むごとにそのユーモアを感じ取れるようになった気がする。特に「僕」が発する通常では到底使いそうもない言葉や、時には相手を突き放したような受け答え。それらが心地よくなってきた。「悪くない」という言葉をどこかで使いたくなってきた。
■ストーリー
フリーのコピーライターとして「雪かき仕事」に従事する「僕」は、何かに呼ばれているような焦燥感を感じていた。それを確かめるためには、もう一度「いるかホテル」に戻らなければならない。そこでは誰かが「僕」を求め、「僕」のために涙を流しているのだ。「羊をめぐる冒険」の続編。
■感想
「羊をめぐる冒険」は未読だ。この作者の作品に限っては続き物という概念はないに等しいのかもしれない。不思議な世界である「いるかホテル」に突如として登場する「羊男」普通ならば面食らうが、既に耐性ができているのでたいした驚きもなくすんなりと作品に入り込むことができた。
「僕」が考えるくだらないともいえる比喩が良い。はっきりとイメージできるような比喩もあれば、僕の文化的レベルが低いのか比喩そのものの意味がわからない場合もあった。くだらないとは思いながらもそれが本作のユーモアの一つだろう。一見、的外れな比喩のように思えても、後から考えればそうかもしれないと思う場面もあった。
比喩の一つとして印象的なのが「雪かき」だ。「文化的雪かき」や「官能的雪かき」など普通では考えつかないことがさらりと書かれている。普通ならばこんなフレーズは到底思いつかないだろう。その普通じゃない部分を好意的に受け取れるか、はたまた判りにくいと嫌悪感を抱くか、どちらかでこの作品の評価は大きく別れるだろう。
上巻として珍しく下巻に引っ張るような終わり方をしている。俄然下巻が楽しみになってきたが、あまり過剰な期待をすると谷底に落とされるほどのショックを受けそうなのでやめておこう。
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