2007.2.4 リズムで楽しむべき 【羊をめぐる冒険 下】
評価:3
■ヒトコト感想
行方不明の鼠、そしてなぞの羊。物語が確信に近づくにつれてより不思議な雰囲気が強くなってくる。美しい耳を持つ女と共にやってきた北海道での生活。何気ない生活のように感じるが、どこか違和感を感じてしまう。羊を探すという目的と鼠を探すという目的が最終的には一つになり、そしてすべてが解決する。強引に思える展開と細かな説明が一切なくただ「羊男」としてだけ登場するなぞの生物。細かいことをごちゃごちゃと考えることなく、リズムで楽しむべきだろう。
■ストーリー
美しい耳の彼女と共に、星形の斑紋を背中に持っているという一頭の羊と“鼠”の行方を追って、北海道奥地の牧場にたどりついた僕を、恐ろしい事実が待ち受けていた。一九八二年秋、僕たちの旅は終わる。すべてを失った僕の、ラスト・アドベンチャー。
■感想
「戦争に行きたくないから」という理由の「羊男」と鼠と「僕」はすべての面において重複する部分が多いのではないだろうか。羊博士も含めて、登場人物たちは現在に失望しどこか無気力に感じられる。これは上巻から感じていたことだが、現世に対する望みや活力というものを一切感じない。すべてにおいて、もうどうでもいいやという投げやり感を感じた。
旅は北海道ですべて終結する。しかし何のための旅で誰に対しての旅だったのか最後までよくわからなかった。羊男の存在が羊をめぐる冒険にどれほどの影響を及ぼしたのか、不思議さの中ではそんなことは一切気にならない。それまた不思議だ。
このシリーズを読んで特に感じたのは、ストーリーに特別な根拠を求めてはいけない。文章のリズムで作品を楽しみながら細かいことを気にしてはいけない。「僕」の何気ない一言や「羊男」のちょっとしたしぐさ。それらすべてを頭の中に描きながら、さらりと読み進めることが一番本作を楽しむに適しているのかもしれない。
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