2008.5.20 繰り返す緊迫感 【バンテージ・ポイント】
評価:3
■ヒトコト感想
大統領銃撃という事件を様々な人々の立場から描いていく作品。基本的には同じ時間軸を繰り返すだけなのだが、視点が異なるので、段々と事件の全容が明らかになってくる。どちらかと言えば好きなタイプの作品ではある。スナッチやクラッシュ。バベルもそんな感じかもしれない。ただ、本作は繋がりや関係性に力を入れており、最初は意味がわからない場面であっても、後になればはっきりとわかってくる。事件そのものは実は大して面白くもなんともない。絶妙な繋がりと大統領銃撃という、その瞬間、それぞれの人々がどのような動きをしていたのか。全体を理解して始めて面白さがわかるということだろうか。
■ストーリー
スペイン・サマランカでの演説中にアシュトン米大統領が何者かに狙撃され、さらに演壇が爆破されるテロが起こった。シークレットサービスのバーンズはTV中継車に乗り込み、撮影された映像をチェック。そこに怪しい何かを見つけた。同時刻、サマランカ市警のエンリケは事件の容疑者として拘束されそうになり、サマランカ市街へと逃亡を謀る。アメリカ人旅行者のハワードは、ビデオカメラを片手にそんなエンリケを追いかけ…。
■感想
最初は銃撃の瞬間を様々なカメラが捕らえており、瞬間的なポイントを集中的に解明していく作品かと思っていたが、思ったよりも大きく広がりを見せていた。大統領銃撃の計画段階から、どのような役割の人がいて、無関係の人々までも巻き込んだ騒動。巻き込まれた人々も含め、それぞれの立場で立ち回っていく様を繰り返し眺めていく。あのときの、あの行動は、実はこの人のこの行動と関係していたのだと後半になればなるほど、はっきりと理解することができる。そして、事件の全容も明らかになってくる。終わってみれば、そんなことかと思うかもしれない。絶妙な関係性を楽しむべき作品だろう。
この手の作品は、昔からあったのだろう。古くはパルプフィクションもそうだった。特別な目新しさはないのだが、スパイは誰なのか、目的は何なのか。ミステリー色が強く、犯人探しの様相も多少含まれているために、場面が変わるごとに犯人グループの内部事情が明らかになっていくのは新しいのかもしれない。事件の最終的な結末が訪れる前に、場面が変わり、同じポイントを繰り返す。観衆は何度も同じ場面を見るのだが、立場が違うと当然その意味合いも変わってくるので飽きることがない。
それぞれの登場人物たちに個性を付けようとしているのだが、ちょっとそれが弱いような気がした。ビデオ片手に瞬間を目撃する旅行者だったり、地元の警察だったり、シークレットサービスだったり。それぞれのエピソードがそれほど掘り下げられていないので、薄っぺらい人物象しか描くことができていない。そのため、本来なら大きな意味をもつ出来事や行動であっても、見ている方はさらりと流し見してしまいがちだ。
新しさは特別感じないが、緊迫感とスピード感はすごい。同じ場面を繰り返しているのに飽きないのも本作の素晴らしい部分なのかもしれない。
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