2006.3.1 画面から目が離せない 【クラッシュ】
評価:3
■ヒトコト感想
終始目が離せない作品。根本的には根深い人種差別によって起こされるちょっとした誤解や行き違いからとんでもないことが起こる。作品に引き込まれっぱなしで起こる出来事全てに反応してしまう。吐き気がするような陰湿な人種差別を行ったかと思うと次の場面ではそれを凌駕するような心温まる出来事がまっていたり・・・。見ている間中、体に力が入りっぱなしだった。因果応報というべきなのだろうか、日常のちょっとした出来事が悲しい事件への呼び水となる。終始悲しい雰囲気に包まれてはいるが、心から良かったと思えるような場面があり、その気持ちが幸せを呼ぶのだと認識させられる作品だ。
■ストーリー
ハイウェイで一件の自動車事故が起きた。日常的に起きる事故。しかしその“衝突”の向こうには、誰もが抱える“感情”の爆発が待っていた。ペルシャ人の雑貨店主人は護身用の銃を購入し、アフリカ系黒人の若い2人は白人夫婦の車を強奪。人種差別主義者の白人警官は、裕福な黒人夫婦の車を止めていた。階層も人種も違う彼らがぶつかり合ったとき、悲しみと憎しみが生まれる。
■感想
人種の坩堝アメリカらしく、様々な人種が登場する。それもステレオタイプな人物達で、白人であればわがままで傲慢。黒人であれば貧乏で荒っぽい。イスラム系であれば短気、アジア系は金にうるさい。あえてそうすることによって、この世にはまだまだ人種差別がまかり通っているというのを表現しているようだ。見ていると胸糞悪くなるような描写や、救いようのない人物が多数登場する。これだけならばただの気分が悪い映画なのだが、本作はそれで終わってはいない。
因果応報。自分の犯したことが、どれほどのことかというのに気づかされる登場人物達。ちょっとした行き違いからとんでもないことをしでかしてしまう。それはとても辛く、悲しいことで、取り返しのつかないことだ。多数の登場人物達は、皆一様にどこか心を病んでいる。正直言うと前半部分は見ていて辛かった。ここまで露骨に人種差別を扱っているとは思わなかったからだ。
しかし、後半から一転して辛い出来事の中にも、心からよかったと思えるようなエピソードも登場する。救いようのない物語の中に一筋の光がさしているように、そこだけまるっきり雰囲気が違っている。見ているものにとってはとても疲れる作品かもしれない。怒りや悲しみ、安堵感、次々と襲ってくる感情を処理するのに必死だった。
綺麗ごとだけを並べるならば誰でもできる。偽善もそうだろう。しかし本作のようにあえてその負の部分を見せておいてそこから人種差別を超えた何かを見せてくれたような気がした。終始画面から目を離すことができず、多数のエピソードが入り混じってはいるが、構成がすばらしいのか非常に分かりやすく飽きずに見ることができた。
日本ではあまり考えられない状況が多々あるが、その雰囲気だけでも十分に感じる価値のある作品だ。
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