バベル


2007.5.9 繋がりを発見しほくそ笑む 【バベル】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
話題作。あらゆる面で話題作だ。しかし、結局は話題だけが先行し、中身は思っていたほどでもなかった。アモーレス・ペロスや21gのように時間軸をたくみにずらしながら複数の物語をつなげていく。正直このタイプは好きなジャンルではある。俳優も申し分なく、構成も好みだ。しかし、決定的なのは一つ一つの話にそれほど魅力を感じないということだ。結局はそれぞれの独立した物語の繋がりを発見し、一人で大発見したような気持ちで悦に入るだけなのだろう。サブリミナル的な繋がりの表現方法は面白いが、それぞれの物語にあまり魅力がないので全体としてはその印象が大きく残ってしまう。

■ストーリー

モロッコで生活のために山羊を襲うジャッカルを撃つために銃を渡された兄弟。彼らはその腕を競い合うように発砲。その銃弾はツアーバスの女性客の体を撃ち抜いた。女性はモロッコに旅行に来ていたアメリカ人夫婦の妻。夫は家に残した子どもたちの面倒をみている乳母に電話をするが、乳母は突然の出来事に驚き悩む。息子の結婚式に出席したい彼女は、やむを得ず、夫婦の子どもたちをメキシコに連れていくことにした。一方、日本では、母親を泣くしたショックから立ち直れない聾唖(ろうあ)の女子高生が愛を求めて町をさまよっていた。自分は誰にも愛されないのか、誰も抱きしめてくれないのかと心の中で叫んでいた…。

■感想
モロッコとメキシコと日本。まったく繋がりがないようで実は細かな繋がりがある。しかし、それは物語にどれだけ重要かというとそうではない。ただ、時間軸をずらし、こっちの物語の出来事が、別の物語のここに影響しているんだなということを一人噛み締めながら映画通ぶるのには最適な作品かもしれない。人が見落とした繋がりを見終わった後で披露して楽しむのが正しい楽しみ方なのだろうか。

日本では菊池凛子の話題が一人歩きしてしまい、作品自体がさもよい物のように思われているが、どうなのか。確かに菊池凛子は体をはった演技をしていた。聾唖の女子高生をうまく演じていたと思う。ただ、物語全体として見ると、実はモロッコやメキシコとはまったくと言っていいほど関係がない。独立した一つの物語としてもなんだか目玉がないような気がした。

時間軸をあえてずらし、物語の結末が分かるようにしたのもポイントなのだろう。結末が分かりながらも悲しい物語はそのテンションをうまく保ちつつ、悲しさを盛り上げている。3つの物語がそれぞれ悲しい結果を迎えているような気がする。全体を通した暗い雰囲気を払拭するような大きなカタルシスもない。ただ、悲しさだけが後に残った。

構成としては十分面白いと思うし、文句はない。ただ話題先行型なので期待してしまっただけに落差も大きい。



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