酒亭DARKNESS [ 恩田陸 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
「珈琲怪談」に近い物語となっている。珈琲~がカフェで男たちが語る怪談ではあったが、本作は酒場の片隅でふと語られるちょっと不思議で怖い話となっている。実話ではないのだろうが、妙なリアリティがあり、恐怖の元凶をそのものずばりを表現するのではなく、何かしら臭わせつつ、物語は終わっている。印象的なのは「跡継ぎの条件」だ。
古典的なホラーかもしれないが、時間で区切られるのが良い。ある居酒屋の隅の席にはこの時間帯は常に席を空けておく必要がある。その理由は…。後で気づいたら、そこに人が座っていたような気がした。。。居酒屋の常連は常に同じ席に座るというのをうまく扱う物語となっている。
■ストーリー
全国各地の酒場の片隅でふと語られる、ちょっと不思議で不穏な話。酒を片手にした謎解きの果てに見えてくるものとは──・老舗の居酒屋を譲られた三代目が、二代目から提示された奇妙な条件とは?(「跡継ぎの条件」)・オカルト方面の才能がまったくないい男が、ある飲み屋街で受けた「お告げ」。(「夜のお告げ」)・「鈴が鳴ったら、風を除けろ」。ユタ家系の親戚に渡された鈴が、ある朝、鳴った。
(「風を除ける」)・フェーン現象が起きる時には、戸を開けちゃいけないと祖母が言う。「入ってくるから」(「曇天の店」)著者が全国の居酒屋からインスパイアされた「居酒屋ホラー」13編+α!あらゆるタイプの「怖さ」をお楽しみください。
■感想
「フェーン現象」は妙な怖さがある。科学的に証明されているフェーン現象。単純にその時の天気と地理的な関係で発生する現象なのだが…。それを恐怖に置き換えているのが良い。フェーン現象であたりの気温が高くなっている。
にもかかわらず戸を開けてはならない。フェーン現象が単純な気象条件ではなく、都市伝説的な影響を与えることになる。暑ければ戸を開ければ風が入って涼しくなるはずなのだが…。祖母は絶対にそうしようとしない。それは〇〇が入ってくるから…。昔話的な恐怖だ。
「歌うカステラ」も印象的だ。すばらしいスイーツのコースを食べる場面が登場し、そこまで甘い物が得意ではなくても食べてみたくなった。まるでおとぎ話に登場してきそうな展開だ。あまい砂糖が大好きでありながら、店員は黒ずくめの服を着ている。
あとで考えると…。砂糖がふんだんに使われたコースを作り出した存在は、砂糖のことが大好きで仕方がないのだろう。まさか、蟻かもしれないという流れになるのは、そのまんまアンデルセンの童話にでも登場しそうだ。
どうやら「孤独のグルメ」のホラー版として描かれたらしい。居酒屋という場所は、確かに孤独のグルメっぽい部分はある。おじさんたちが怪談話をする珈琲怪談よりは、こちらの方が違和感はない。作中に登場してくる話を聞いていると、昭和の映像が頭の中に思い浮かんでくる。
居酒屋という場所は、くだらない話であっても、盛り上がる部分はあるのだろう。都市伝説というか、ちょっとしたホラーであれば、盛り上がることは間違いない。
さらりと読める短編集だ。