狐花 


 2025.4.30      この世のものとは思えない美しい男の幽霊 【狐花】


                     
狐花 葉不見冥府路行 (角川ホラー文庫) [ 京極夏彦 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
奉行の娘である雪乃の前に現れた美しい男・萩之介。萩之介と関係をもった女たちの策略により殺されたはずの萩之介が、幽霊となって現れる。「了巷説百物語」で登場した中禅寺が再び登場する。序盤から何かおどろおどろしい雰囲気があり、幽霊の存在についても信じさせるような説得力がある。ただ、中禅寺だけはいつものようにすべてを理解した状態でいる。

奉行と商人たちがひた隠しにしてきた何かがラストで明らかとなる。終盤の怒涛の展開がすさまじい。この世のものとは思えないほど美しい男の萩之介。その存在は、すべて復讐のためにあった。すべてを見通していた中禅寺の忠告を聞かずに、復讐に動いた萩之介の最後は非常に悲しいものとなっている。

■ストーリー
作事奉行の娘・雪乃の前に現れた、この世のものとは思えない美しさを持つ萩之介。彼岸花の着物を纏う彼は、”この世に居る筈のない男”だった。この幽霊騒動を知った雪乃の父・上月監物は、過去の因縁と関わりがあるのではないかと疑うが……。絡まりあった謎を解きほぐすため、武蔵晴明神社の宮守・中禪寺洲齋が”憑き物落とし”へと乗り出す。京極堂の曾祖父が相対する、悲しい真実とは――。

■感想
冒頭で、中禅寺が何者かを諭している。これが実は萩之介であり、復讐に燃える萩之介を思いとどまらせようとしたというところなのだろう。この世のものとは思えないほど美しい男である萩之介。それが幽霊となると、美しい男はイメージが合致する。

商人の娘たちの策略にはまり殺されたはずの萩之介が、幽霊として現れ、復讐する?という流れが描かれている。美しい男の幽霊に惑わされ、そして錯乱した商人の娘が自分の父親を殺したりもする。このまま萩之介の幽霊の復讐劇が続くのかと思いきや…。

中禅寺が登場し、付き物落としを行う。中禅寺がでてきたことで、幽霊はないと想像できた。中禅寺自身も幽霊の存在を否定しながら、その人によっては心が幽霊を見せると語る。何かしら過去に遺恨がありそうな奉行たち。その秘密を中禅寺に話すことですべてが解決するはずだったのだが…。

秘密を守ることで中禅寺は去っていく。萩之介の正体が判明するのは終わり間近だ。驚きの種明かしが待っている。それまで恐ろしく美しい彼岸花の着物をきた幽霊のイメージが一気に変わることになる。

ラストに向かう種明かしの中で、中禅寺の驚きの出自も判明する。京極堂の祖先にあたる人物ではあるが、萩之介が実は中禅寺と大きな関係があったと明かされる。中禅寺が非暴力の動きをするのは徹底している。ただ、言葉で相手の心を動かし最終的には、悲しい過去が解き明かされる。

萩之介の幽霊的な恐ろしさから、復讐心の強さの恐ろしさに変わっていく。萩之介が女に化けた状態で、雪乃に気づかれないというのはありえないように思えたのだが…。

美しい男と幽霊は妙にマッチする。



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