了巷説百物語(7) [ 京極夏彦 ]
評価:3.5
京極夏彦おすすめランキング
■ヒトコト感想
巷説百物語シリーズの終わり。これまでに登場した様々なキャラクターが総登場し、敵と味方が入り混じる形で物語が終了している。中禪寺や又市や藤兵衛たちが敵となるのか味方となるのか。新たに登場した強力な敵である七福神など、ワクワクする展開がある。千ページを超えるボリューム感ではあるが、そのボリュームを感じることなくサクサクと読めて、ラストに向かって物語は盛り上がっている。
藤兵衛の仲間たちが次々とやられていく。ラスボス的なキャラはそれなりにインパクトがあるが、あくまでも途中経過が面白い。言葉で相手を翻弄する中禪寺とは別に、武闘派として登場する人物たちの個性が良い。特に暗闇で射撃を行う鵺が強烈なインパクトがある。
■ストーリー
化けの皮、見切った――。文学賞3冠の〈巷説百物語〉シリーズ堂々完結!〈憑き物落とし〉中禪寺洲齋。〈化け物遣い〉御行の又市。〈洞観屋〉稲荷藤兵衛。彼らが対峙し絡み合う、過去最大の大仕掛けの結末は――?文学賞3冠を果たした〈巷説百物語〉シリーズ堂々完結!下総国に暮らす狐狩りの名人・稲荷藤兵衛には、裏の渡世がある。凡ての嘘を見破り旧悪醜聞を暴き出すことから〈洞観屋〉と呼ばれていた。
ある日、藤兵衛に依頼が持ち込まれる。老中首座・水野忠邦による大改革を妨害する者ども炙り出してくれというのだ。敵は、妖物を操り衆生を惑わし、人心を恣にする者たち――。依頼を引き受け江戸に出た藤兵衛は、化け物遣い一味と遭遇する。やがて武蔵晴明神社の陰陽師・中禪寺洲齋と出会い、とある商家の憑き物落としに立ち会うこととなるが――。
■感想
主人公は相手の嘘を見抜く稲荷藤兵衛。又市たちの仕掛けに戸惑い、敵か味方かわからない状態で、個性的なキャラクターが登場してくる。これまでのシリーズで主役級の活躍をしてきた者たちが、脇役で登場してくる。
一つの目的のために動き出す。七福神を模した者たちとの対決は熱い。描写からして日本人ではない武闘派な七福神。対して藤兵衛たちは新たな仲間も加わり対抗していく。元侍の右近や、敵対組織で用心棒として活動していた剣士など、多種多様な登場人物が本作の見どころだ。
火薬を操る男や、どんな暗闇でも相手を撃ち殺す男など、とんでもない能力を持つ者たちが合流する。物語のラスボスは中盤までわからない。福之屋の店主である富三がラスボスかと思いきや…。裏で富三を操り幕府の老中すらもあやつることで、国を変えようと考える存在がいた。
天保の改革を作り上げた元凶というような描かれ方をしている。ここまで壮大で強大な敵に対しては、すべての戦力で戦うしかない。藤兵衛は嘘を見抜くだけだが、それが重要な役割を担っている。
中禪寺は暴力を使わずにラスボスと対峙しようとしているのだが…。結局は武闘派の仲間たちの助けがなければ、到底ラスボスにはたどり着けなかっただろう。これまでのシリーズを読んでいれば、主役級の活躍をしていたキャラクターが次々と登場してくるのでワクワクしてくる。
オールスターが集まり強大なラスボスと戦うという流れだ。強力な敵である七福神が強いというのも魅力のひとつなのだろう。嘘を見抜く藤兵衛が敵と思われた又市や十文字たちと仲間となるのはすさまじいワクワク感だ。
ラストにふさわしいオールスター具合だ。