不思議な時計 本の小説 


 2025.2.16      バスターやカンガルーの語源 【不思議な時計 本の小説】


                     
不思議な時計 本の小説 [ 北村薫 ]
評価:2.5
北村薫おすすめランキング
■ヒトコト感想
北村薫の本の小説シリーズ。このシリーズでは相変わらず作者の古典好きが全開となっている。出てくる作家の名前は聞いたことがあるのだが、その作家の作品を読んだことはない。本作に登場してくる作家の作品を何かしら読んでいないと楽しめないだろう。自分の場合はほとんどの作者の作品を読んでいなかったので、あまり楽しめなかった。

ただ、映画作品については、それなりに自分が見たことのある作品が登場してきたので、そのあたりに言及している部分については楽しんで読むことができた。古典の作品が好きだというイメージがあったので、映画についても昔の作品が好きなのかと思ったのだが…。意外にも最新の作品も含まれていることに驚いた。

■ストーリー
第51回泉鏡花文学賞を受賞した『水 本の小説』に続く、著者独自の連作小説。記憶の森を探り行き、本との出会いを綴る。深まる謎を追い、魅惑の創作世界へ――映画、詩歌、演劇、父との思い出。萩原朔太郎『猫町』とジャン・コクトー、江戸川乱歩「パノラマ島奇談」と美術館のパノラマ。塚本邦雄生誕百年、シェークスピア劇での松たか子、大竹しのぶの慧眼……はるかな異界へ連れ出される9篇。

■感想
作者の知識を活かしながらのエッセイ風の作品となっている。荻原朔太郎については名前も聞いたことがないので、よくわからないまま読みすすめることになった。「猟奇」という言葉の語源や、猟奇という言葉が世代によって意味合いが変わっていく様は確かに面白い。

最初に意図した意味とは違う形で使われることになる。特に有名作品の影響は大きいのだろう。「猟奇的な彼女」という映画が有名になったので、その影響で猟奇的というのが、「すごい」の上級の形容詞的に使われるというのは強烈だ。

荻原朔太郎以外にも、江戸川乱歩やそのほかの作者についても描かれている。作者の底なしの知識や、そのほかのうんちくに圧倒されるのはいつものパターンなのかもしれない。ある程度の知識がないと、辛いのは間違いないのだが、理解できると面白い。

特に「バスター」のくだりは最高だ。野球の本場のアメリカでは別の言い方をする。実は、素晴らしいという感嘆の言葉を日本人が勝手に聞き間違えてバントの構えからヒッティングにうつることをバスターということになっている。

同じようなパターンとして、カンガルーについても、あれは何かと聞いた人物について現地の言葉でわからないというのがカンガルーだったので、カンガルーという名前が付いたなど、嘘かほんとかわからないが非常に興味深いエッセイが続いている。

このシリーズとしては「水」もあり、それなりいインパクトがあるのは間違いないが、バックグラウンドの知識がないと、辛いのかもしれない。作者が話題として取り上げた何かひとつでも自分にヒットすれば楽しめるだろう。

シリーズはまだまだ続きそうだ。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp