水 本の小説 


 2023.4.29      古典に興味をもつきっかけとなる? 【水 本の小説】

                     
水 本の小説 [ 北村薫 ]
評価:2
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■ヒトコト感想
北村薫の作品。相変わらず必要な事前知識がとんでもなく高度だ。基本的には古典に詳しくなければならない。文豪についてもそれなりの知識がないと楽しめない。登場してくる作家は、最近の作家は皆無だ。すべて作者の琴線に触れた過去の文豪と作品についての言葉が続いていく。エッセイ調であり作者の趣味が強烈にでている作品だ。

作者の日常に起こるちょっとしたこと。それを編集長と話をして様々な解決に導いている。過去の作品や落語や歌舞伎まで。様々なマニアックな知識をもとに意外な思考をはりめぐらす。元ネタを知らないので作者の意図した楽しみを味わえていないのかもしれない。それでも、うっすらとだが作者がなにを面白がっているのかはわかる。

■ストーリー
本を愛する作家が、言葉と物語の発する光を掬(すく)い取り、その輝きを伝える7篇。懐かしくて新しい物語の言葉が、映像や詩や短歌、歌のことばに結び合わされて光を放ち、豊かに輝き出す。向田邦子、隆慶一郎、山川静夫、遠藤周作、小林信彦、橋本治、庄野潤三、岸田今日子、エラリー・クイーン、芥川龍之介……思いがけなく繋がっていく面白さ。本の達人ならではの探索と発見が胸を打つ

■感想
水は作中のエッセイのひとつを表題としている。間違いなくかなりマニアックな本好きのための作品だ。求められる前提知識はかなりハードルが高い。小林信彦や橋本治、エラリー・クイーンなど。ミステリーらしさは感じない。

いろはかるたのくだりについてはほとんど元ネタはわからなかった。古典の有名なフレーズがかるたとして作られている。それを誰のどの作品かと当てるのだが…。自分は何一つわからなかった。作者と同じようにフレーズを見ただけでどの作家かピンとくる人が楽しめる作品だろう。

人生の残り時間を考え、読める本の数には限りがあるから、今後読むなら古典しか読まないと言いきる作者なだけに古典の知識はすさまじい。そんな作者でも古典の中でわからないことがあり、編集長に聞きに行ったりもする。

文学かるたや様々な文豪の小ネタ。小説を期待していた人にとっては作者の古典に関するエッセイなので、期待外れかもしれない。多少のミステリーの要素はあるのだが、古典の謎にすぎない。過去の文豪については当然知っている人物もいるのだが…。楽しむにはハードルが高い。

本好きの人にもハードルが高いのは確かだ。文学エッセイとでもいうのだろうか。どこをターゲットにしているのか謎だ。作者の意図した楽しみ方ができる人がどれくらいいるのか。自分もそれなりに本を読んでいるつもりだが、元ネタについてはほとんどわからなかった。

積極的に古典を中心に読む人か、研究者くらいでないとついていけないのではないだろうか。今の20代、30代がすんなりと楽しめるとは思わない。ただ、古き良き日本文学への入りのきっかけとして、こんな作品も必要なのだろう。

ここから古典へと興味を惹かれるパターンもあるのだろう。



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