海へ、山へ、森へ、町へ 


 2023.12.22      小川糸の食事エッセイ 【海へ、山へ、森へ、町へ】

                     
海へ、山へ、森へ、町へ (幻冬舎文庫) [ 小川糸 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
小川糸が料理関連で様々な人々と出会う。日本国内だけでなくモンゴルやカナダにも足を延ばす。作者の料理の描写の仕方は独特で、なんてことない料理もおいしそうに感じてしまう。旅先で料理と出会い、それに関するエッセイを書く。感動的な料理もある。モンゴルの料理は、やはり個性が強いというか、日本人にとっては少し抵抗がある料理かもしれない。

羊の料理も、おそらくは癖が強いのだろう。ただ、モンゴルの地で現地の人々が心を込めて作ってくれた料理なので、その感想も変わってくる。自然の恵みと人々の愛情により料理は変わってくる。食べる側の心構えによっても大きく味は変わってくるような気がした。日本の田舎でふるまえられた料理はいかにもおいしそうだ。

■ストーリー
天然水で作る地球味のかき氷(埼玉・長瀞)。ホームステイ先の羊肉たっぷり手作り餃子(モンゴル)。地元の山菜を使った一日一組の贅沢なレストラン(滋賀・米原)。西表島で真夜中に潮干狩りをし、カナダの森でキノコ狩り。自然の恵みと人々の愛情によって絶品料理が生まれる軌跡を辿ろう! 美味しい出会いを求めた旅の滋味溢れるエッセイ。

■感想
天然氷を使ってのかき氷。確かにおいしそうだ。埼玉の長瀞で伝統的な手法で作られる天然氷。製造方法が詳しく語られているのだが、山の中のプールに水を入れて氷を作る。屋外なのでゴミが入らないのか?と思ってしまう。

普通の冷蔵庫で作らる急速冷凍での氷とは根本的に違う。典型的な屋台のかき氷的なものは、食べると口の中に氷が残り頭がキーンと痛くなる。天然氷のかき氷は、口の中に入れた瞬間に解けてしまう。同じ水を原料としていても、ここまで違うのかと思わせられる食べ物だ。

モンゴルでの食事のエッセイもある。作者の他のエッセイ「私の夢は」で、モンゴルでの生活が語られているのだが…。現地での羊肉を使った料理というのは、確実に癖があるのだろう。日本的な食べ物に慣れており、癖をとことんそぎ落とした日本人の苦に合うように作られた料理とは違う。

海外の人が日本の納豆を食べるような感覚なのかもしれない。自分的には癖のある食べ物は苦手で、できるだけオーソドックスな食べ物を好みなので、本作のような食事のエッセイではかなり好き嫌いが激しくなるだろう。

山奥で一日一組しか食べることができないレストランは最高だ。これこそまさに作者の「食堂かたつむり」と同じような雰囲気なのだろう。すべての食材は地元でとれたもの。客を限定することで、その客に対して思う存分もてなすことができる。

一番の贅沢かもしれない。その他、人々の深い愛情がこもった料理の数々が紹介される。特殊な場所であればあるほど、特殊なる料理を期待するが、シンプルな料理こそ素材や場所のメリットが活きるのだろう。

作者らしいエッセイ集だ。



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