タイムズ 


 2022.5.31      コロナ渦の東京を斬る 【タイムズ】

                     
タイムズ 「未来の分岐点」をどう生きるか [ 真山仁 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
真山仁が日本社会の現在地を描く。東京オリンピック開催前の2019年に連載がスタートしたということで、まだコロナ騒ぎの前だ。東京でオリンピックをやる意義はあるのか、という流れで連載はスタートするのかと思いきや…。コロナ騒ぎによりオリンピックは延期となる。それら社会の流れを当時の作者が感じた思いが描かれている。

その後、本作を出版する前に、当時を振り返る記述も追記されている。何か明確なポリシーがあるわけではない。ただ、「ハゲタカ」などを描いた作者が、今の日本をどのように見ているのか。印象的なのは、グレタさんが地球温暖化に警笛を鳴らすことについての記事だ。地熱発電を真剣に考える時期なのかもしれない。

■ストーリー
このままでは「分断社会」どころか、「断絶社会」、あるいは「ディストピア」が現実になる可能性すらある――。1964年の「東京五輪」から半世紀以上がたった。戦後の日本は、何が変わり、何を失ったのか。希望はどこにあるのか。そして、新型コロナ対策や五輪開催をめぐる狂騒をどう捉えればいいのか。小説家・真山仁が政治・経済・教育・メディア・若者など、さまざまな現場に足を運び、多角的な視点から日本社会の「現在地」を描く。

■感想
世界的にもここ2年は激動の時期なのだろう。特に東京についてはコロナ渦でのオリンピックをどのようにして実現するのか。終わってみれば延期してよかったのか悪かったのかよくわからない。延期せずとも変わらないレベルだったのだろう。

結果論でしかないのだが…。様々な利権が絡み、オリンピックをどうすべきかの議論がある。作者として、どうすべきかという結論はでていない。わりと政治家に責任を押し付けるような描き方をしている。自分としては政治がどうにかしたらうまくいくものでもないのでは?と思ってしまった。

「安全保障としての公衆衛生」は印象的だ。コロナ渦を過去に予測したような映画がある。「コンテイジョン」なのだが、自分も同じことを感じていた。作者的には、ありえないとして世間は映画を楽しんでいたのだが、実際にほぼ同じことがコロナとして発生している。

もはや疫病は国家の安全保障にも関わることなのだろう。ただ、グローバル化がすすんだ現在では、他国で発生した疫病を防ぐことは難しいのだろう。これから先、未来も同じようなことが起きるかもしれない。その時に、どのようにして対応するかは政治の役目なのだろう。

「タワマンの未来」は身近なことだけに気になる部分だ。ニュータウンの実状がタワマンの未来と言われている。確かに何十年後かには、タワマンはどうにもならない状態となり、廃墟と化しているのかもしれない。あの巨大な建物が廃墟となると周辺も危険なエリアとなる。

ある意味、タワマンはババ抜きのような状態だろう。誰が最後にババを引いた状態となるのか。ニュータウンよりもさらに規模の大きいタワマンがどのような結末を迎えるのかは気になるところだ。

その時の記事と、のちに後日談として描かれた記事があるのが良い。



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