ハゲタカ 上 


2007.11.12 バブル崩壊後の日本の裏側? 【ハゲタカ 上】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
バブル崩壊後の日本の裏側を描いているような作品。何気なくすごしてきた日常の裏には、外資と国内企業の激しい戦いが繰り広げられていたのだろうか。主役である芝野と買収側の戦い。外資系といいながらも、そのトップが日本人ということで、感傷的になることがない。怠慢経営のオーナー企業が、外資に食い物にされ、ビジネスの世界の厳しさをまざまざと思い知らされる。しかし、そうなるのは当然という思いがあり、読んでいて爽快感すら感じてしまう。どちらかというと、日本的な義理人情よりも、外資的な利益優先という考え方の方が判りやすく、共感しやすかった。

■ストーリー

ニューヨークの投資ファンド運営会社社長・鷲津政彦は、バブル崩壊後、不景気に苦しむ日本に戻り、瀕死状態の企業を次々と買収する。敵対するファンドによる妨害や、買収先の社員からの反発を受けながらも、鷲津は斬新な再生プランを披露し、業績を上げていく。企業買収、再生の真実を克明に描いた問題作。

■感想
ライブドア問題や不良債権問題。バブル崩壊後の日本の内情を知らずにすごしてきた世代にとっては、本作は結構衝撃かもしれない。多数の企業が倒産した影ではこんなことが起きていたのだろうか。そして、利益をむさぼるハゲタカ外資が、裏でどのような動きをしてきたのか。ノンフィクションではないが、本作はとてもリアルに、そして物語的な面白さを感じながら読むことができた。一人の男が外資に立ち向かう姿は、なんとなくだが沈まぬ太陽を思い出してしまった。

銀行が不良足権を二束三文で外資に売りつける。そして、それを使って外資が儲ける。本作を読むまでは、なぜ銀行は外資と同じことをして儲けないのかと思っていた。銀行は銀行の立場があり、しがらみのない外資だからこそできる手段なのだということがわかった。外資の義理も人情もない、利益優先の仕事ぶり。血も涙もないと思いがちだが、バブル崩壊後の日本でぬるま湯に浸かっていた者たちは、淘汰されるべきだという考えには納得できた。

大金を動かす銀行業務の裏の顔。情報操作にコネを最大限に使う仕事ぶり。スケールが大きすぎて、なんだか感覚が麻痺してしまったが、デカイ仕事をする登場人物たちになんだか
変な憧れのようなものを覚えてしまった。綺麗ごとでは済まされない世界。日本人は特に美談を好みがちだ。もしかしたら本作も、外資の容赦ない攻撃にあいながらも芝野を中心に、古き良き日本の企業が逆転するという流れになるのかもしれない。しかし、それはそれで面白そうだ。

現実の世界がこれほどドラマチックだとは思わない。しかし、不良債権を巡る駆け引きは、門外漢でありながらも、ドキドキしながら読んでしまった。

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