サマーゴースト 


 2022.8.26      幽霊と出会い自殺志願者が改心する 【サマーゴースト】

                     
サマーゴースト [ 乙一 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
「一ノ瀬ユウナが浮いている」と同じパターンの作品だ。本作の方が先に描かれたのだろうが…。線香花火をすることで女性の幽霊と出会うことができる。実は女性は自殺したのではなく殺されていた。女性の死体を探し出すミステリー的な流れもある。このあたり作者でる乙一の「夏の花火と私の死体」とパターンは同じかもしれない。主人公以外にも、死にたいと考えるあいと涼の2人がサマーゴーストと出会う。

それぞれ事情があり自殺を考えている。主人公の自殺の動機が一番根深いのかもしれない。何不自由なく成績優秀な優等生が自殺したいと考える。サマーゴーストとの出会いと他二人の出会いにより主人公の人生観が変わっていく物語だ。

■ストーリー
サマーゴースト”という幽霊が現れるという。夏、使われなくなった飛行場、花火をすると、彼女は姿を現すらしい。自殺した女性の幽霊なのではないかという噂だ。ネットを通じて知り合った高校生、友也・あおい・涼。3人は“サマーゴースト”を探すために集まった。3人は幽霊に聞いてみたかった。“死ぬって、どんな気持ちですか?”それを聞くべき理由が、3人にはあったのだ――。

■感想
そもそもが幽霊探しのために集まった3人。線香花火をするとそこには幽霊が姿を現した。実際に幽霊を目の当たりにしても驚き怖がるでもなく、死ぬのがどんな感じかと聞くあたり普通ではない。死を覚悟した者にとっては幽霊であっても、ただの興味のひとつでしかないのだろう。

サマーゴーストと交流し、そしてお互いが交流し合う。自殺願望がある者にとっては、幽霊は自分たちの先輩という考え方なのかもしれない。物語としては、あいや涼、そして主人公たちがなぜ自殺したいと考えるのかが語られている。

サマーゴーストが実は自殺ではなく殺されていたと判明する。そして、自殺願望のある3人は、サマーゴーストと共に体から魂を抜け出して自由に動き回ることができる。そこでサマーゴーストの死体が入っているスーツケースが埋められている場所を探そうとする。

まさに幽体離脱をする感じでサマーゴーストと共に世界を周る。自殺願望がある者だけが幽体離脱ができるという流れとなっている。サマーゴーストが死ぬ直前に聞いた情報からスーツケースの場所を探す、一種のミステリー的な流れがある。

サマーゴーストの死体が隠されていたスーツケースを見つけ出すことに成功する。事件の真相が明らかになり、サマーゴーストとの交流も終わる。自殺を考えていた3人が自殺を思いとどまるまでに心境が変化することも本作のポイントなのだろう。

主人公は今までひたすら母親の言いなりになっていたのが、自分の考えを主張するようになり変わっていく。涼も不治の病と闘い生きようと決意する。幽霊との交流により死にあらがうようになるのが本作の流れだ。

「一ノ瀬ユウナ」よりもシンプルな構成だ。



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