夏と花火と私の死体 乙一


2006.1.8 独特の文章が特徴的 【夏と花火と私の死体】

                     
■ヒトコト感想
「夏と花火と私の死体」「優子」という二つの作品がおさめられており、前者はハラハラドキドキ後者はミステリアスな雰囲気という感じなのだろうか、読んでいて非常に読みやすくサクサクと進む感覚は心地よいのだがあまりに軽く読めすぎて、逆に手ごたえが無いように感じてしまった。夏と花火~は死体目線という一風変わった方式で死体が見つかるか見つからないか、ギリギリのせめぎあいに手に汗握る。子供達のドライというか、怖いもの知らずな感覚にうすら寒いものを感じた。後半まで一気にすすんでいくが最後の終わり方だけがちょっと納得いかないものがあったが、十分それまでに楽しませてもらえる作品だ。

■ストーリー

九歳の夏休み、少女は殺された。あまりに無邪気な殺人者によって、あっけなく。こうして、ひとつの死体をめぐる、幼い兄妹の悪夢のような四日間の冒険が始まった。次々に訪れる危機。彼らは大人たちの追及から逃れることができるのか?死体をどこへ隠せばいいのか?

■感想
わりと夏と花火~が有名なのだが、僕はどちらかというともう1つの優子のほうが印象に残っている。独特の雰囲気があるのはもちろんなのだが、特にそんな時代設定はされていないはずなのにどこか古めかしい大げさに言うと昭和初期のような香りを感じてしまった。その雰囲気とあいまって、主人公である清音と同じようにどことなくフワフワしたような感覚になってしまう。

ミステリー系はどれだけ自分の期待をいい意味で裏切ってくれるかによって面白さが変わると思っているのだが今回もわりと予想できる展開ではあったが、そこに到達するまでのもっていき方が非常に巧妙に感じた。同じストーリーで別の人が書くとたぶんずいぶんと印象が違った作品になるかもしれない。これが作者の素の文章なのかそれとも確信犯的にやっているのかは不明だ。

理論的にトリックを暴いたり、複雑怪奇な事件が起きたりということはないのだが物語自体は単純なものでそれを構成する人物達が非常に生き生きと描かれており、またその中でも確信に迫る部分では独特のおどろおどろしい雰囲気を出している。

まだこの作者の作品は本作以外読んでいないのでなんとも言えないが違う作品を読んでみて、作者の才能なのか、それとも偶然の産物なのかが判断できるかもしれない。




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