真珠とダイヤモンド 下 


 2023.10.3      崩壊の足音しかしない 【真珠とダイヤモンド 下】

                     
真珠とダイヤモンド 下 [ 桐野 夏生 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
上巻では望月が調子よく株で成功し、証券会社でも出世していく物語だった。そこから佳那と結婚し、さらには東京でブイブイ言わせるのだが…。予想通り、下巻では株の暴落による転落が描かれている。ヤクザの山鼻に追い詰められていく望月。大金を儲けて好き勝手してきた者たちは、いつかそれが終わるというのをどこかで感じていたのだろう。

バブルの狂乱が終わったころ、現実にも同じような者たちが多数いたことだろう。真に恐ろしいのは、調子のよいときは優しく紳士的だった山鼻が、失敗したとわかるととんでもない追い込み方をする部分だ。最初から崩壊するのは目に見えていた。それでも後戻りできない何かがあるのだろう。恐ろしい時代だ。

■ストーリー
時代はバブル全盛に。東京本社に栄転が決まった望月と結婚した佳那(かな)は、ヤクザの山鼻の愛人・美蘭(みらん)のてほどきで瞬く間に贅沢な暮らしに染まっていく。一方の水矢子(みやこ)は不首尾に終わった受験の余波で、思いがけない流転の生活がスタートする。そして、バブルに陰りが見え始めた頃、若者たちの運命が狂い出す……。

■感想
望月の成り上がり系の雰囲気が強かった上巻。ヤクザの山鼻を顧客として担当するなど、明らかに危ない雰囲気が漂っていたのだが…。下巻では東京でブイブイいわせる望月が描かれている。望月が成り上がると奥さんである佳那の生活も変わっていく。

強烈なのは山鼻の愛人である若いホステスと一緒にホストクラブ通いをしたりもする。金を手にして何不自由のない生活をしたとしても、佳那は昔のようなアグレッシブさがなくなっている。バブルに陰りが見え始めたころなので、その後の結末は想像ができる。

望月は株の取り引きの有名人と知り合いとなる。いかにも怪しげな男だが、顧客から大金を集めそれを無免許で運用し巨額の利益を得ていた。前のめりになるしかない現実。望月はもはや後戻りできない状態になっているのだろう。

佳那も望月と一蓮托生だ。そんな中で、みやこだけは独自の道を行くのだが、占い師の家でお手伝いさんとして生活する中で、株関連で望月と再び連絡をとるようになる。このあたり、望月を中心として、すべてが繋がっていく。ただ、崩壊の足音しかしない。

バブルが崩壊し多くの人が損をすることになる。株取引の有名人は警察に逮捕間近という噂が流れる。大損をした山鼻は望月に追い込みをかける。もうこうなると、観衆は望月と佳那がうまく逃げ切れるかに興味がわいてくる。

強烈なインパクトがあるのは、ただ山鼻に有名人を紹介しただけで、望月が直接株の運用をしていたわけではないが、なぜか望月に補填を求める山鼻だ。ヤクザは徹底しており、佳那に対しても追い込みをかけることを忘れない。

予想通りの結末だ。



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