2023.10.1 バブル時代の証券会社の喧噪 【真珠とダイヤモンド 上】
真珠とダイヤモンド 上 [ 桐野夏生 ]
評価:3.5
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■ヒトコト感想
桐野夏生の作品。バブル全盛の時代の証券会社社員を主人公として株を扱う物語。福岡で成り上がり東京に行くことを夢見る証券会社社員の望月、短大卒の小島佳那、高卒の水矢子の視点で描かれていく。序盤からそれぞれの立場で相手を見つつ、成り上がる方法を探している。望月がトントン拍子に成果をだし成り上がっていく。
そして佳那と結婚までしてしまう。望月はダメ人間かと思われたのだが、あまりに証券会社での仕事がうまくいきすぎている。太客を捕まえ儲けさせ、さらに別の太客を紹介させる。ついにはヤクザまでも客として成果をだす。上巻ではすべてが順風満帆に行き過ぎている。下巻では今までのつけが一気にこないかと不安になる流れだ。
■ストーリー
1986年春。二人の女が福岡の証券会社で出会った。一人は短大卒の小島佳那(かな)、もう一人は高卒の伊東水矢子(みやこ)。貧しい家庭に生まれ育った二人は、それぞれ2年後に東京に出ていく夢を温めていた。野心を隠さず、なりふり構わずふるまう同期、望月昭平に見込まれた佳那は、ある出来事を契機に彼と結託し、マネーゲームの渦に身を投じていく。
■感想
女子なので証券会社で実力を発揮できないことを悩む佳那。せっかく手に入れた客につても、周りからは枕営業と言われる。男尊女卑が当たり前のバブル時代の証券会社の強烈な雰囲気が描かれている。今ではパワハラ、セクハラで絶対にNGのことが当たり前の世界だ。
望月は新人なので周りからイジメにあう。本人の空気を読めない性格のせいもあるのだが…。佳那と知り合い、佳那の顧客である医者の息子を紹介されてから大成功の道を進み始める。望月のサクセスストーリーがひたすら描かれている。
望月のことを毛嫌いしていた佳那と水矢子も、望月が成功し始めると変わっていく。そして、佳那と望月はカップルとなり結婚にまですすむ。付き合っている男が成功すると、合わせて恋人まで地位が引き上げられるというのはかなり特殊だ。
支店長と付き合っていたお局様が、不倫が破局すると一気に社内での立場が危うくなり退職を迫られる。30歳でお局扱いとなり、女子社員は男子社員の結婚要員という扱いが、いかにもバブル全盛の証券会社という感じだ。
水矢子は勉強して東京の大学に入るために金をためている。上巻では水矢子の動きは少ない。望月がひたすら危ない橋を渡りながら成功していき、ついにはヤクザまでも紹介され社内で成り上がっていく物語だ。NTT株の売り出しだとか、バブルの株の熱狂など、当時をリアルタイムに知らないが、とんでもない時代だというのは感じることができた。
ひたすら働き、儲けた者が偉い。わかりやすい弱肉強食の世界。イジメに合っていた望月の扱いが変わるのも望月が成果を出したからだ。
すべてがうまくいっている望月。下巻で落とし穴がありそうで怖い。
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