ローズマリーのあまき香り 


 2023.12.4      長大な物語のオチは究極にシンプルだ 【ローズマリーのあまき香り】

                     
ローズマリーのあまき香り [ 島田荘司 ]
評価:2
島田荘司おすすめランキング
■ヒトコト感想
御手洗潔シリーズ。今回は人気バレリーナであるクレスパンが撲殺された事件だ。物語のポイントとしては2幕と3幕の間で撲殺されたはずのクレスパンがなぜか3幕でバレエを披露した。確実に撲殺されたはずのクレスパンが3幕で踊ることができたのは?ということだが…。オチとしては非常に単純なものとなっている。

ただ、そこに至るまでのプレスパンの人生やその周辺の人々。果ては歴史的なことや、脳のことまで事細かに語られており、かなり長大な物語となっている。ミステリーとしてのオチが弱いのでがっかりしてしまった。それまでの長い前振りのわりに、大したことがない結末だと、それまでの長い物語がなんだったのか、という印象をもってしまう。京極夏彦のようなパターンを想像したのだが、それとも違っていた。

■ストーリー
世界中で人気を博す、生きる伝説のバレリーナ・クレスパンが密室で殺された。1977年10月、ニューヨークのバレエシアターで上演された「スカボロウの祭り」で主役を務めたクレスパン。警察の調べによると、彼女は2幕と3幕の間の休憩時間の最中に、専用の控室で撲殺されたという。しかし3幕以降も舞台は続行された。さらに観客たちは、最後までクレスパンの踊りを見ていた、と言っていてーー?

■感想
バレリーナのクレスパンが殺害された。20年以上前の事件を御手洗が調査する。脳に多大な衝撃を受け、死亡するほどの打撃を受けながら3幕を踊ることが可能なのか。不可解な事件として未解決のまま終わっていたものを潔が解き明かす。

その前段として脳の科学的な検証が行われている。人にはどのような能力があるのか。脳には未知の能力がある。死ぬほどの衝撃を受けたとしても、そこから血のにじむほど踊り続けたバレエであれば体が覚えていて無意識でのダンスが可能なのか?という流れとなる。

クレスパンの人生が描かれている。波乱万丈な人生の中で、クレスパンがどのようにしてトップダンサーになっていったのか。その過程で、本作のトリックのオチが判明してくる。潔は何もかもわかった状態でもったいつけながら事件を紐解いていく。

本筋とは違う細かなうんちくが語られている。それを楽しめるかどうかが本作のポイントだ。京極夏彦のようにマニアックなうんちくをひたすら語る。長大な物語の半分は余計な内容のような気がした。

ラストのオチはがっくりくるような展開となる。撲殺されたプレスパンが無意識にダンスを踊ったのか。普通に考えればありえない。その謎解きとしては…。誰もが想像する当たり前のオチとなる。ただ納得できるようなものではない。クレスパンではない別の人物が3幕を踊ったとして、それを共演者や周りが納得するのか。

トップバレエダンサーのふりをポッと出の人物ができるのはあきらかにおかしい。無理やり、それらしい謎を作りながらも、オチはシンプルになっている。

長大な物語のオチとしては弱すぎる。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp