パラダイス・ガーデンの喪失 


 2022.8.4      コロナ渦での複雑な事件【パラダイス・ガーデンの喪失】

                     
パラダイス・ガーデンの喪失 [ 若竹七海 ]
評価:3
若竹七海おすすめランキング
■ヒトコト感想
葉崎市シリーズ。個人庭園で身元不明の老女の死体が発見された。パラダイスガーデンを語った老人ホームの詐欺や、子供の誘拐事件など複数の出来事が絡み合う事件だ。メインは誰というのはなく複数の人物視点で語られている。強烈なのは、パラダイスガーデンのオーナーである房子視点だ。自分が作り上げた庭がいつのまにか詐欺の材料として使われる。

知らないうちに老人ホームの建設予定地にされ、そうとは知らない老人たちから様々な問い合わせとクレームが入る。事件にも巻き込まれ、さんざんな目にあったことは間違いない。おばさん刑事が事件に対応し、自己保身に必死な管理官などとのやりとりが秀逸だ。登場人物が多すぎて混乱する可能性すらある。

■ストーリー
2020年秋、葉崎市の崖の上にある個人庭園〈パラダイス・ガーデン〉で、身元不明の老女の自殺死体が発見された。庭園のオーナー・兵藤房子は自殺幇助を疑われ、事件をきっかけにそれぞれの人物が抱える綻びが連鎖しはじめ、葉崎市に隠されていた謎がモザイクのように浮かび上がっていく……。総勢15名以上の住民の物語が交錯するパッチワークのようなミステリー。

■感想
目が覚めると自分の自慢の庭に身元不明の老女の死体がある。これは強烈だ。あげくのはてには、房子が自殺ほう助をして老女に死に場所を用意したと疑われてしまう。房子は完全に巻き込まれた形だが、物語がすすむにつれて、身元不明の死体もそうだが、そのほかの事件についても実は繋がりがあったとわかる。

人の戸籍を入れ替え、お互いが同意していれば決してバレることはない。そのことが事件解決に大きな影響をおよぼすことになる。ラストの解決編はあまりに複雑な流れとなっている。

物語全体としてコロナ渦ならではの物語となっている。夫がリモートワークで妻と子供たちがストレスフルとなる。そして、夫がいつのまにか仕事をクビになっており、さらにはママ友の息子、つまり自分の子どもの友達の誘拐事件に関わっていたと警察から伝えられる。

かなりショッキングな状況だ。そもそも、夫がモラハラタイプで奥さんの状況は客観的に見てもつらすぎる。裕福なママ友家族をうらやましく思うなど、ちょっとドロドロとした流れとなるのが良い。

パラダイスガーデンという素晴らしい庭がある。その庭の近くに新しく老人ホームが建つと言われ、事前に申し込んだ老人たち。素晴らしい庭に囲まれて余生を過ごすのは理想なのだろ。

それが実はすべて詐欺だったと知らされたとしても、パラダイスガーデンのオーナーに文句を言いたくなる気持ちもわからなくもない。特徴的なのは、すべての老人たちが自分の思い込みでひたすら話続ける部分だ。聞く耳もたないというか、少しは落ち着いたらどうかと少しムカついてくる。

強烈な物語であることは間違いない。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp