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　2015.7.6 　　 　　この死体は自殺か他殺か　【依頼人は死んだ】

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■ヒトコト感想
葉村晶シリーズ。探偵事務所の契約社員となり、必要な時だけ探偵を続ける葉村。そこで、葉村の元に舞い込む依頼は、自殺かそうではないか？という依頼が多い。そして、極め付けは短編をまたいで登場してくる青黒い痣を持つ男の存在だ。葉村が対応する依頼の数々は、主に「なぜそんなことをしたのか調べてほしい」や「そんなはずはないので真相を」というのがメインだ。

積極的ではなく成り行き上でしょうがなく調べるパターンもある。葉村のキャラが他者に対してフレンドリーではないため、突き放した冷たさを感じてしまう。そして、結末がまた、突き放した展開が多い。思い込みによる依頼の結果、知らなくてもよい真実を知ってしまうパターンもある。

■ストーリー
女探偵・葉村晶（あきら）は探偵事務所からの仕事で生計をたてながら、時に家族がらみの無料捜査も押し付けられる、何でも屋だ。念願の本を出版し、結婚直前だった順風満帆の婚約者はなぜ自殺したのか？

受けてもいない健康診断の、ガンを知らせる通知書が届いた意図は？瀟洒なプチ・ホテルに集う常連に隠された惨事とは？彼女に持ち込まれる事件の真相は、少し切なく、ぞくっと怖い。構成の妙、鮮やかなエンディングにうならされる、みごとな連作短篇集。

■感想
「たぶん、暑かったから」は、母親の知り合いだからと強引に調査することになった葉村。知り合いの娘が総務課長をドライバーで刺した事実を調査する。娘を信じる母親の思いと、事実を積み上げていくことにより導き出された結果が秀逸だ。

タイトルの「たぶん、暑かったから」という言葉は重要なカギとなる。葉村が真実を導き出すために、ひとつひとつ謎を解き明かしていくのが心地良い。ひとつのことをかたくなに信じ続ける者の醜さというのを感じずにはいられない。

「わたしの調査に手加減はない」は、女の無意識な優越感というか、マウンティングを連想させる作品だ。母親の友人から依頼された親友の死因調査。自殺なのか事故死なのか。自殺では理由が説明つかないと言う。

真実は女性としての幸せというか、他人と自分を比較した際の瞬間的な劣等感による自殺なのか。それとも単純な事故死なのか。葉村が冷静に事態を読み解くのだが、強烈な皮肉というか、女性として相手に負けたくない、という部分での強烈な気持ちの変化を読み取ることができる。

「都合のいい地獄」は、今までの流れからすると、本作だけ毛色が違う。他短編でも登場した、首筋に蒼黒い痣を持つ男。他人を死へと追いやる力をもつのかそれとも…。それまでの現実的な探偵物語風だったのと較べると、ファンタジーというかホラーというか、特殊な流れがある。

偶然にせよ、人を事故に見せかけて殺すことができるのか。相手を催眠術にかけることにより、ひとりの人を思うがままに操作することができるのか。オチはさておき、この手の流れは嫌いではないので楽しく読むことができた。

葉村シリーズとしての楽しさのエッセンスが詰まっている。