オカルト 


 2024.3.29      作者の実体験をふくめたオカルト風な短編集 【オカルト】


                     
オカルト 新潮文庫/田口ランディ
評価:3
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■ヒトコト感想
田口ランディの短編集。実生活での経験をそのまま描いたようなエッセイ風な作品もある。作者がこれまで経験してきたオカルト風な体験がメインで描かれている。印象的なのは、作者の兄の死亡関係なのだろう。兄が孤独死し、死体がドロドロに溶けたという部分がその後の作者の様々なトラウマとなっている。また、虫に好かれるというのも印象的だ。

普通に横になっていたら蜘蛛が耳の中に入ってくるなんてのは普通ではない。母親の死期を悟り、何でもないときに、家族を連れて母親に会いにいくなど、虫の知らせのような雰囲気を感じさせる作品だ。長年付き合ってきた男友達の話や、世の中の理不尽なことについても作者の思いっきりのよい言いっぷりが最高だ。

■ストーリー
母はいちごあめの瓶を抱きしめて、嬉しそうに笑っていた。母の魂だったのだろうか。暗くなった山道を漕ぎながら、私はなぜかおろおろと泣いていた―。ぎゅっと、畏怖を、抱きしめるもうひとつの世界との交感。散文35篇。

■感想
印象的なのは、駅で突然消える人がいるという短編だ。本当か嘘なのか。ホームにいた多くの人と駅員が目撃した線路へ飛び込んだOL。駅員が線路を調べたが死体も何もない。逃げ出した形跡もない。多くの人が目撃したが突然姿を消した。

おそらく監視カメラにもOLの姿は映っているのだろう。つい思い出したのは「GANTZ」だ。電車に轢かれた瞬間に消えてしまうパターンだ。そのほかにもさまざまな人が駅で消えているようだ。もしかしたら、駅は別の世界へとつながっているのかもしれない。オカルト的な内容だ。

親との関係を描いた作品もある。父親が癇癪持ちで子供や母親に暴力をふるっていた。高齢となった父親の癇癪には慣れた状態となったのだが…。両親の関係や、母親が倒れた時に必死に看病をする父親の姿など、普通ではない家族関係が描かれている。

父親は親戚から二重人格と思われていた。それほど母親に対する暴力と、やさしさが同時に存在したのだろう。感情の起伏の激しい人は怒りややさしさの感情の起伏も激しい。作者自身は真逆で感情の起伏がほとんどないので、怒りを表面に出すこともなければ、嬉しさや楽しさを表現することも少ないらしい。

本当なのか嘘なのか。作者が経験したオカルト体験も語られている。作者の「コンセント」などを読んでいると、作者の周辺にはもしかしたら何かしらあるのかもしれないと思えてくる。特殊な体験をしているというのもあるのだろう。作者の他のエッセイを読んでも、普通の人が経験しないようなことを経験している気がする。

ハッとするようなこともある「ゴツゴ様」は、まさに自分の都合の良いことだけを見ていた作者が、成長し視野が広がり自分の都合の良い部分だけでなく、全体を見られるようになったという話だ。

作者のこの手の作品はかなり興味深く読むことができる。



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