コンセント 


 2023.8.14      ドロドロの腐乱死体となった兄 【コンセント】

                     
コンセント/田口ランディ/ 幻冬舎
評価:3
■ヒトコト感想
兄がアパートの一室で腐乱死体となる。そんな衝撃的な経験をしたユキの物語。主人公のユキは精神的に不安定なように感じた。気軽に男と寝る生活。学生時代の心理学の教師と恋人同士となっていたが、その恩師に再びカウンセリングを依頼する。ユキは兄の死をきっかけとして兄の亡霊を見るようになる。心理学の部分は正直よくわからない。

兄の死をきっかけとしてユキがスピリチュアルな世界に入り込み、自分の悩みで周りを混乱させていく。結局何が言いたいのか、どんな小説かと説明するのは難しい。男女により感じ方が変わるのかもしれない。兄が孤独死し腐乱死体で見つかる。生きることを諦めた兄の姿を見た妹は、その後の人生に多大な影響を受けることになる。

■ストーリー
ある日、アパートの一室で腐乱死体となって発見された兄の死臭を嗅いで以来、朝倉ユキは死臭を嗅ぎ分けられるようになった。兄はなぜ引きこもり、生きることをやめたのか。そして自分は狂ってしまったのか。悩んだ末に、ユキはかつての指導教授であるカウンセラーのもとを訪ねるが…。彗星のごとく出現し、各界に衝撃を与えた小説デビュー作。

■感想
衝撃的な作品であり、よくわからないというのが第一印象だ。精神的に病んでいた兄がしきりにつぶやいていた言葉。コンセントが抜けるとまるで電源が切れたように動かなくなる。作中ではとんでも理論として、人間の脳は見えないプラグでコンセントに繋がっており、その先にあるサーバは全世界の人々の記憶が保存されている。

そのため、赤の他人の記憶や前世の記憶があるのは、そのサーバにアクセスし記憶を引き出しているかららしい。精神的に病んでいる人が考えそうな理論だ。

ユキは男に好かれるタイプらしい。ただ、男関係がだらしなく、誰とでも寝る代わりに、長続きしない。ユキが指導教授と過去付き合っていたという事実がありながら、兄の死後、指導教官にカウンセリングを依頼する。

ここで、カウンセリングと言いながらも、どこか言葉の応酬の中での戦いのように感じられた。後半になるとスピリチュアルな要素が強くなる。なぜ兄が死んだと知る前に、男と寝ている天井に兄の姿を見たのか。シャーマンや屋久島など、スピリチュアルな要素が盛りだくさんとなる。

序盤でのドロドロに溶けた兄の死体を、死体処理業者と立ち会う場面はとてつもなく濃密な描写となっている。前半が現実感が強く、精神的に病んでいる者の物語のように感じられた。後半は、一転、スピリチュアルな要素が強くなり、人間の根源に関わるような流れとなる。

自分が何者かわからない。兄がコンセントを抜かれると体が動かなくなるとつぶやいた言葉に影響されているユキ。オカルトの要素はそこまで強くないが、精神的に病んでいる人は辛い描写が続くかもしれない。

前半の気持ち悪さは群を抜いている。



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