「おばけ」と「ことば」のあやしいはなし 


 2022.8.28      妖怪や幽霊はいないと言い切る作者 【「おばけ」と「ことば」のあやしいはなし】

                     
京極夏彦講演集 「おばけ」と「ことば」のあやしいはなし [ 京極夏彦 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
京極夏彦が各地の講演会などで話した内容がまとめられている。妖怪をモチーフにした作品を描いており、水木しげるとも交流のあった作者だけに、妖怪の存在を声高に主張するのかと思いきや…。。妖怪に限らず本や幽霊のことまで多種多様でありながらまっとうな意見を述べている。幽霊は存在しない。ただ、信仰としてはありだとのこと。

妖怪についても人が何かしら自分の身に起こった出来事を例えるために妖怪を使っただけという。まぁ、普通に考えれば妖怪の存在を主張してもしょうがない。作者の作品は全般的に妖怪の仕業としか思えない事件が起きるが、実際には人間が事件を起こしていたというオチとなる。それをそのまま講演会で話しているような感じだ。

■ストーリー
日本各地に言い伝えられる「妖怪」から江戸・明治期の絵師・河鍋暁斎、「ゲゲゲの鬼太郎」の水木しげるまで令和版「妖怪談義」。「水木しげる作品」がウケ続けているわけは?柳田國男が『遠野物語』で描いた「河童」「山人」…「幽霊」「妖怪」「おばけ」の怖さ「私は京極だが、京極は私でない」のはなぜか?

■感想
妖怪にまつわる話や日本語の話まで、講演会では出席者の年齢層に合わせた話題を選んでいるのだろう。60歳近い年齢のはずが「妖怪ウォッチ」は当然のこととして「ぬらりひょんの孫」まで知っていたのは驚いた。

最近のエンタメについても詳しいようで、わかりやすい例として引き合いにだしたりもする。幽霊はなぜ恐ろしいのか。死んだ人と会うことについては怖くはない。それが呪いだとか恨みだとかが絡むと恐ろしくなる。幽霊が恐ろしいのは人が根本的に死を恐れているからというのがあるらしい。

妖怪は存在するのか。妖怪関連の小説を書いてはいるが、妖怪の存在には否定的だ。そして、幽霊についても明確に存在していないと言っている。ただ、人の心には死者を敬う気持ちがあり、宗教的な何かを否定するわけではない。

印象的なのは、霊能者がおすすめするツボやお祓いを受けたからといって何かがよくなることはない、と言い切っていることだ。先祖を敬う気持ちは大事だが、そこに必要以上にとらわれることはないということらしい。明確に幽霊の存在を否定しているのは面白い。

日本語や本について語る場面もある。本は昔は高価だったが今は手軽に手に入る。作家ではあるが、買って読まなくても良い。図書館で借りて読んでも良いという、かなりおおらかなスタンスではある。作者の作品のファンであれば妖怪に詳しいのだろう。

妖怪の存在を信じてはいないが、幽霊はいるかも?と思っている人もいるかもしれない。変にオカルトに影響されることなく、まっとうに科学的なスタンスでいるのも良い。見た目は和服を着て気難しそうだが、かなり現実的な考え方をするのは間違いない。

作者の意外なスタンスがわかる作品だ。



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