2022.3.8 作者だからこそ出せるこの雰囲気 【人情ヨーロッパ】
人情ヨーロッパ 人生、ゆるして、ゆるされて [ たかのてるこ ]
評価:3
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■ヒトコト感想
「純情ヨーロッパ」から続く旅エッセイ集。本作ではより現地の人々と濃密な関係を築いている。作者がめずらしく、旅先で恋に落ちたりもする。それも、妻子ある男にだ。旅先で結構モテモテな印象がある作者が、常に寄ってくる男たちを跳ねのけていたのだが、今回はあっさりとそして情熱的に受け入れている。そのほかにも、人を殺した男と魂が通じ合うような会話をしたり。異国の地だからこそできる会話もあるのだろう。
なかなか英語が通じない状態であってもお構いなしに突っ込んでいく。各国で何かしらのテーマをもって行動しているようだが…。かなりアグレッシブに活動している。けが人が続出するような橋からのダイブを意地でもやろうとしたり。。想像を絶する行動力だ。
■ストーリー
「人生最大の冒険」に出るつもりで、18年勤めた会社を辞め、欧州21ヵ国をめぐる、2ヵ月・15000キロの鉄道旅に出た、てるこ。一見、超しかめっ面で無愛想なのに、意外や意外!下町が舞台のドラマに出てくるような、めちゃめちゃ人情深いヨーロッパの人たち。クールな音楽家のねえちゃんの家に泊まらせてもらって飲み明かし、25m下(! )の川へのダイブを熱血指導してくれた師匠と笑い、語り明かすうち、心の奥底にあった怒りや憎しみが溶けてゆく、究極の毒出し旅!
■感想
大阪のおばちゃんがそのままヨーロッパを旅するようなエッセイ。写真もあるので、作者の旅の様子がよくわかる。作者は美人や可愛いというタイプではない。しかし、ヨーロッパではモテモテのような、特にトルコでは通りを少し歩くだけで次々と男から言い寄られるらしい。
海外では日本の女性はモテるらしいのだが…。どれだけモテてもまったく相手にしていない作者だったが、前作を含め、今回は心の底から恋するような恋愛を経験する。それも妻子ある人物に恋するというちょっと意外な流れとなっている。
ある国では、橋から25m下にダイブをしようとする。道頓堀からダイブするのとは桁違いで、その場ではつい先日もけが人がでたということらしい。そんな危険な場所でも果敢にダイブするため、ダイブを主催するディビッドに懇願する。ここから、ディビッドとの濃密な会話がスタートする。
ただのダイブの師匠と弟子の関係から、魂がつながるような親友となる。セルビアやクロアチアの国の問題や、それらの出来事の最中に人を殺したことがあると告白するディビッド。かなり衝撃的な出会いということだろう。
21ヵ国もの国を旅し、それぞれの国で自分にミッションを課す。かなり過酷な旅であるが、最終的な印象としては、やはり作者のものおじしない行動力がすさまじいということだ。ヨーロッパなので英語が必ず通じるわけではないのだが、それでもガンガン会話し仲良くなり、あわよくば家に泊めてもらったりもする。
仲良くなった人たちが必ず楽しそうにしているのは、作者の大阪気質によるところが大きいのかもしれない。「深夜特急」などの旅エッセイとは違った、よりフレンドリーな旅であることは間違いない。
この雰囲気は作者だからこそ出せるのだろう。
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