鈍色幻視行 


 2024.9.9      次々と関係者が死んでいく呪いの作品 【鈍色幻視行】


                     
鈍色幻視行 [ 恩田陸 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
「夜果つるところ」を先に読んでしまったので、呪いの作品といわれた恐ろしさは特に感じなかった。呪われた小説の映画化を行おうとすると、必ず関係者内に死者がでる。作者である飯合梓の不気味さもあるのだが、関係者たちの証言から不思議な作品の真相が見えてくるのだが…。正直、小難しい会話を関係者間で行われているという感じだ。

本作の主人公である梢は再婚相手である雅春と共に関係者にインタビューを続ける。豪華客船の中に関係者が集まり過去や思い出を語る。梢からすると、ほぼすべてのインタビュー対応者が年上で、やりにくいこともあるのだろう。呪われた小説の真相が明らかになるわけでもなく、飯合梓の正体が明らかになるわけでもない。なんだかモヤモヤとした作品だ。

■ストーリー
謎と秘密を乗せて、今、長い航海が始まる。撮影中の事故により三たび映像化が頓挫した“呪われた”小説『夜果つるところ』と、その著者・飯合梓の謎を追う小説家の蕗谷梢は、関係者が一堂に会するクルーズ旅行に夫・雅春とともに参加した。船上では、映画監督の角替、映画プロデューサーの進藤、編集者の島崎、漫画家ユニット・真鍋姉妹など、『夜~』にひとかたならぬ思いを持つ面々が、梢の取材に応えて語り出す。次々と現れる新事実と新解釈。旅の半ば、『夜~』を読み返した梢は、ある違和感を覚えて――

■感想
長大な作品の冒頭で、呪われた小説の話が始まる。映画化しようとすると必ず関係者に死者がでる。その呪われた小説は「夜果つるところ」として実際に出版されており、すでにそれを読んでいる。なんの事前知識もなく、本作で取り上げられていると知らずに読んだのだが、妙な不気味さがあったのは確かだ。

そんな作品を映画化する際に死者がでる。ミステリー的な展開を予想していたので、死者が出る裏には何かしら原因があり、犯人がはっきりする流れを予想していたがそうはならなかった。

梢が関係者にインタビューをする。主人公である梢や再婚相手である雅春にもそれぞれ作品に因縁がある。雅春の元妻は映画化の脚本を担当しており、その後自殺している。それを知りながら梢は関係者にインタビューをしようとする。

映画プロデューサーや漫画家ユニットの姉妹など、多種多様な関係者が登場してくる。基本は会話の応酬なので、流れを楽しむべき作品なのだろう。新たな真実が明らかになるわけではない。ミステリーの要素としても特別なトリックがあるわけではない。

航海が終わるころに関係者を一堂に集めてなぞ解きのような展開があるのだが…。結局何も新たな展開はない。映画監督や関係者たちが飯合梓について語る。この正体不明の作者が現れたりすればまたホラー的な要素もあるのだろうが…。

飯合梓が死んだか死んでいないかもわからない。結局のところオチ的なものはなにもないように感じた。長大な物語にしては、結局何が言いたかったのかわからなかった。呪われた作品のいわくの部分をもっと強調された方が良かった。

かなり最後まで読むのは辛かった。



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