モザイク 


 2024.1.15      人類の進化の過程がすべて頭の中に 【モザイク】


                     
モザイク / 田口ランディ
評価:2.5
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■ヒトコト感想
「コンセント」シリーズの第三弾。移送屋を営む女ミミは、14歳の少年正也との交流を描く。精神世界の話が大きくなる。渋谷に集まる若者。渋谷が完全に電子レンジ化するというのはよくわからない。ミミの生い立ちから精神的な問題点を探る。正也は精神に異常をきたしている。家族への危害を加える恐れがあるため、移送するのがミミなのだが…。

正也がつぶやく「渋谷の底が抜ける」や若者たちが心酔する「救世主救済委員会」などよくわからない世界が描かれている。頭の中のOSの話やほかの人との頭の中の記憶の共有などが複雑だ。精神病院に入るような人が良くわからない論理でつぶやくような複雑怪奇な話のような気がした。特殊すぎる物語だ。

■ストーリー
まもなく渋谷の底が抜ける。渋谷は完全に電子レンジ化する-。精神病院への移送途中、逃亡した14歳の少年は、霧雨に濡れるすり鉢の底の街に何を感じたのか? 知覚と妄想の狭間に潜む鮮烈な世界を描く書き下ろし長篇。

■感想
「コンセント」でも感じたことだが、主人公の女性が特殊な生い立ちをしている。今回の主人公のミミは、自分が生まれるタイミングで父親がガンで死んでいた。実はこの父親の存在がのちのちの「救世主救済委員会」に関連していたという驚きの展開がまっている。

母親はミミが幼少期に交通事故で事故死していたと思われていたが、それはミミの思い込みだった。実際にはミミの母親はビルから飛び降りて自殺していた。飛び降り自殺の死体をミミは交通事事故の死体と勝手に変換していた。

ミミは職業として移送屋をやっている。特殊な武道の訓練を受けたミミは、様々なトラブルも独自の力で解決している。正也という14歳の少年に対しては、力を使わずに会話で精神病院へと移送しようとするのだが…。

精神に異常をきたした若者との会話は恐ろしい。渋谷がカギとなっているのだが、渋谷で何が起こっているのかわからない。ミミの同僚ということで同行した男が渋谷でおかしくなっていく。若者に支持される「救世主救済委員会」。この字ずらだけで異様な雰囲気がただよってくる。

ラストでは正也が語る。人間の頭の中の話になるのだが、これは強烈だ。これまで人間が進化してきた過程の情報がすべて頭の中に入っている。やはり「コンセント」からつながる物語なので、脳の話となる。頭の中のOSがどうだとか、人の記憶がどうだとか。

なんとなくだが、貴志雄介の作品である「我々は、みな孤独である」で語られた内容に近いのかもしれない。様々な人々の記憶が蓄積されているのは恐ろしい。頭の中のOSは常にアップデートされていくのだろう。

シリーズとしては異色に感じた。



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