我々は、みな孤独である 


 2021.5.26      この世には前世よりも強烈な仕組みが存在する 【我々は、みな孤独である】

                     
我々は、みな孤独である [ 貴志祐介 ]
評価:3
貴志祐介おすすめランキング
■ヒトコト感想
探偵・茶畑が奇妙な依頼を受ける。前世で自分を殺した、という荒唐無稽な依頼なのだが…。物語は、前世は存在するのか?ということがメインに語られている。茶畑自身も前世としか思えないような夢を見たりもする。自分が経験した出来事が前世なのか、現実に存在した出来事なのかを調査していくうちに奇妙な人物に出会う。

物語のラストは壮大すぎてとても普通の終わり方ではない。前世うんぬんをすっ飛ばした内容となっている。物語にはひどく残酷な描写が続く場面がある。人間の感覚を無くしたようなヤクザの丹野が、容赦なく残酷な行動を繰り返す。メキシコのマフィアは敵対する人物の両手両足を切断し拷問する。それらすべてがラストのオチの衝撃とリンクしている。

■ストーリー
探偵・茶畑徹朗の元にもたらされた、「前世で自分を殺した犯人を捜してほしい」という不可思議な依頼。前世など存在しないと考える茶畑と助手の毬子だったが、調査を進めるにつれ、次第に自分たちの前世が鮮明な記憶として蘇るようになる。果たして犯人の正体を暴くことはできるのか?

■感想
会社社長から前世の調査を依頼される茶畑。前世などない、と思うのが普通だが、社長が語る前世は現実に起きた出来事と一致している。本作は前世の出来事を元にして、ゴーストライターに小説を書かせ、それを元に郷土史家などに調査させることからスタートする。

この手の物語として、前世などは存在せず別の要因で前世のように勘違いしている、というのが流れとしては自然なのだが…。前世の調査と並行して茶畑は残虐なヤクザの丹野に借りができてしまう。それだけでなくメキシコのマフィアからも狙われる茶畑であった。

前世の調査がメインなのだが、中盤で同じように前世に言及していた占い師が、この世の仕組みを全て知ってしまったばかりに精神が崩壊する、という流れがある。前世の調査を続けるとこの世の深淵を覗くことになる。強烈な引きの強さで、前世のからくりがどのようなものかが小出しにされる。

前世の調査を始めた茶畑は社長と同じような時代を別の人物として経験する。これが調査に影響されて観た夢ではなく、実際に経験したリアルだと気づく。このあたりで前世は本当にある、という流れとなる。

終盤では衝撃的なオチとなる。茶畑の探偵事務所の事務員である鞠子も、前世を経験し始める。鞠子が経験した時代を調査すると、鞠子が前世として経験した小学生がまさに存在したということが判明する。計算では20歳で死んでいるはずなのだが現在もその人物は存在し茶畑と鞠子の前にいる。

前世の仕組みには、実はもっと壮大な仕掛けがある。残虐な丹野も両手両足を切り捨て拷問を行うメキシコのマフィアもすべてひとつというとんでもないオチとなる。

もし、本作の仕組みが現実であれば、精神が崩壊するのもうなずける流れだ。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp