魔女と過ごした七日間 


 2023.11.13     計算でルーレットを的中させる魔女 【魔女と過ごした七日間】

                     
魔女と過ごした七日間 [ 東野圭吾 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
「ラプラスの魔女」「魔力の胎動」と同様のシリーズ。円華がAIにより監視システムが強化された日本で、その特殊な能力を発揮する。シリーズの定番として、円華が信じられないような計算の力で推理する。本作では円華が計算ですべてを判断しているとは言及されない。

川の流れや風の向きなどから、死体が発見された場所から実際の殺害現場を推理する。円華の能力の極めつけはカジノのルーレットで好きな場所に玉を落とすことができる部分だ。さすがに計算はできたとしても力加減などはどうやっているのか?と疑問に思わずにはいられない。本作の肝心な殺人事件の方は割と平凡で、近未来ということ以外では特別な要素はない。これまでのシリーズと比べるとパワーダウンしている。

■ストーリー
AIによる監視システムが強化された日本。指名手配犯捜しのスペシャリストだった元刑事が殺された。「あたしなりに推理する。その気があるなら、ついてきて」不思議な女性・円華に導かれ、父を亡くした少年の冒険が始まる。

■感想
元刑事の父親を亡くした少年。事件は父親が元刑事時代に追いかけ続けた犯人に殺されたのか?という流れとなる。少年の父親が実は外に隠し子を作っていたという衝撃的な事実があり、少年は混乱する。天涯孤独の身になった少年はごちゃごちゃありながらも、円華と共に事件の犯人を見つけ出そうとする。

父親の隠し子うんぬんは、単純に円華と出会うために必要なのだろう。ギフテッドとして特殊な力のある者たちだけが生活する施設。そこで仕事をする円華。特殊能力の全容については明かされない。

円華の特殊能力が本シリーズの売りなのだが。今回はまったく解明されないまま、円華のスーパープレーだけを表現している。警察でも発見できなかった殺害された場所については円華が計算で割り出している。

川の流れとその日の天候。この位置で死体が上がったのならば、どこで殺害された可能性が高いのか。最も強烈なのはルーレットの球を好きな場所に入れる流れだ。ルーレットを見て、どこに落ちるかを判断するのは可能かもしれないが、自分で玉を入れるタイミングや力加減についても正確に円華は制御できるということだ。

指名手配犯を見つけるスペシャリストの父親が何者かに殺された。その根底にあるのはDNAで全てが管理される仕組みを作った組織だった。近未来の捜査はこうなるのだろうと想像できる。すべてが科学的に判断され遺留品のDNAで犯人が見つかる世界はくるのだろう。

ただ、肝心のDNAサンプルをどのようにして大量に手に入れるのか。そこからさらに、DNAから対象者の顔をAIが作り上げるというとんでもない世界になっている。ミステリーとしてのトリックは弱いが近未来は恐ろしい世界になると予想されている。

円華のシリーズはまだまだ続くのだろう。



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