コロナ漂流録 


 2023.9.26      コロナ関連のスキャンダル 【コロナ漂流録】

                     
コロナ漂流録/海堂尊
評価:2.5
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■ヒトコト感想
海堂尊のコロナシリーズ。実際の出来事に合わせて描かれているこのシリーズ。「黙示録」「狂騒録」ときて「漂流禄」となる。作者は医者なので、当然ながら医者目線での画期的な何かがあるのかと思いきや…。メインはコロナ渦での出来事がそのまま架空の名前で描かれているだけだ。コロナワクチン騒動や、ワクチン開発のための補助金に関するスキャンダルなども描かれている。

結局、コロナについて、単純な風邪としてのスタンスでよいのか、それとも重要な感染症として扱うべきかは描かれていない。田口が登場し、新たなキャラクターも登場してくる。日々のニュースをそのまま架空の名前を使ってなぞるだけ。新たな要素は多少あるのだが…。

■ストーリー
2022年7月――コロナ新規感染者は一日10万人を超えていた。第7波、第8波と、波状攻撃で新型コロナウイルスは日本社会に襲いかかる。医療現場は医療崩壊の状況を超え、今や「医療麻痺」に陥っていた。その頃、ホスピス病棟とコロナ病棟の責任者を兼務している田口公平は、新任の中堅医師・洲崎に手を焼いており、この問題を解決するため、禁断の一手、厚生労働省の白鳥圭輔を東城大に召喚するが……。

■感想
ホスピス病棟とコロナ病棟を兼務していた田口が新たに仲間に加わった洲崎医師に手を焼くのが序盤の流れだ。コロナ渦での医療ひっ迫具合はすさまじい。ただ、それを医師の目からどのように見えているのか。必要以上にコロナを注意すべきか、それとももっと簡単な病気として扱うべきなのか。

自分的には物語の中でそれらが激しく主張されるのかと思っていたのだが…。結局はただ現実の出来事をなぞっているだけになっている。安倍元首相が暗殺された件や統一教会の問題についても別名で扱っている。

コロナワクチンの補助金に対するスキャンダルが中盤から描かれている。このあたりは物語としてのオリジナルなのかもしれないが…。そのあたりよりもワクチンが本当に効くのかだとか、ワクチンがどうなのかが描かれている。

ワクチンは効果的というスタンスなのだろう。国産ワクチンが難しいのは当然として、それを利用して金儲けしていた者たちが糾弾される。そもそもバチスタシリーズが厚生労働省の白鳥なども登場するので、コロナ問題に対する役者はそろっているのだが…。

現実世界と変わらない展開というのは微妙だ。コロナ初期での、まだコロナがどうなるかわからない段階での小説はワクワクした。ある程度おさまってきている段階であればただのインフルエンザと同じ扱いを小説化しても面白くはない。

時事ネタを入れるとしても、作者の政治的な傾向が色濃く出ているようで少し没頭できなかった。コロナが収束し五類に分類されたとしたら、物語としては成立しなくなるのだろうか。強烈なインパクトはないのだが、時事ネタが好きな人は楽しめるだろう。

コロナ渦の終わりが見えてきた。



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