2023.5.21 悪が救いようのない悪として描かれる 【子宝船 きたきた捕物帖2】
子宝船 きたきた捕物帖(二) [ 宮部みゆき ]
評価:3
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■ヒトコト感想
きたきた捕物帖第2弾。前回と同様に北一が事件の真相を探る。今回の事件は子宝に恵まれる宝船の絵にまつわる物語と、弁当屋の一家が毒物で皆殺しにされる事件だ。前作は元忍である喜多次が大活躍したのだが…。本作では北一が情報を精査し各所へ問いかけることで事件を解決している。宝船の絵は、絵の中の弁財天が消えるとそのタイミングで産まれたばかりの子どもが死亡するという物語だ。
子供ができずに悩んでいる夫婦には藁をもつかむ思いで子宝船の絵を手に入れたのだが…。子供が死んだタイミングで弁財天が船から降りようとしている絵となっている。誰が仕組んだものなのかを北一が調査する。作者の特徴かもしれないが、真の犯人は吐き気がでるような悪人となっている。
■ストーリー
江戸で噂の、「持つ者は子宝に恵まれる」という宝船の絵。しかし、赤子を失ったある家の宝船の絵から、なぜか弁財天が消えたという。時を置かずして、北一もよく知る弁当屋の一家三人が殺される。現場で怪しげな女を目撃した北一は、検視の与力・栗山の命を受け、事件の真相に迫っていく。
■感想
子どもを欲しくてたまらない夫婦の間で話題となる絵があった。子宝に恵まれる宝船の絵。それを家に飾り子宝を得た者は大喜びしたのだが…。子供はあっけなく死んでしまう。そして、宝船の絵は弁財天が船から降りるような絵となっている。
不吉な絵ということで絵の作者である男が糾弾されるのだが…。絵が変わるなんてのはありえない。誰かが仕組んだことは間違いないのだが…。誰がどんな理由で絵を描いたのか。7歳くらいまでの子どもはあっさり死ぬ場合がある。それを誰かのせいにしないと夫婦関係はもたないのだろう。
仲睦まじい弁当屋家族が毒で皆殺しにされた。誰かに恨まれるような夫婦ではない。近所でも評判の家族が…。北一は怒りの思いで事件を調査するのだが…。いくつかの要素がある。江戸時代では綿密な捜査ができるわけではない。そのため、これと定めた容疑者を追い込むのは自白しかない。
厳しい拷問により耐えきれずにやってもいないことを白状したりもする。その瞬間に一家皆殺しの犯人は決まってしまう。覆すことができず、真犯人のみ、のうのうと生きることになる。
作者の作品の特徴として、犯人は心底悪人というのがある。何か理由や同情すべき事柄があるわけではない。ただ単純に幸せそうな家族を壊したいからと毒を食べ物に仕込む。北一が人相書きを用意し喜多次が動き回る。犯人と思わしき女を捕まえることに成功したのだが…。
悪女は生きていてもしょうがないと考え、死を選ぼうとする。移送中に北一を巻き添えにして死のうとするのがなんとも往生際が悪い。喜多次の活躍により北一は死を免れたのだが…。
悪は救いようのない悪として描かれている。
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