2021.1.29 魅力的なキャラクターの新シリーズ 【きたきた捕物帖】
きたきた捕物帖 [ 宮部みゆき ]
評価:3.5
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■ヒトコト感想
宮部みゆきの江戸時代を舞台にした新シリーズ。文庫売りの北一が事件の狂言回し役となり、親分のおかみさんが盲目であり、安楽椅子探偵の位置づけとなる。さらには、北一を助ける役として謎の男・喜多次の存在がある。長屋の管理人や様々な人の力を借りて独り立ちしていく北一。宮部みゆきが得意なパターンなのだが、それぞれの短編の結末が良い。
悪だくみをした者はしっかりと痛い目を見る。良い人物には周りの助けにより幸せが待っている。不思議な事件や出来事の裏を、北一から話を聞くだけで適切なアドバイスをするおかみさんの存在と、裏で北一を助けるために暗躍する喜多次の存在が良い。シリーズとして続くのだろうが、かなり魅力的なキャラクターたちだ。
■ストーリー
まだ下っ端の見習い岡っ引きの北一(16歳)は、亡くなった千吉親分の本業だった文庫売り(本や小間物を入れる箱を売る商売)で生計を立てている。やがて自前の文庫をつくり、売ることができる日を夢見て……。北一が、相棒・喜多次と出逢い、親分のおかみさんの協力を得て自立し、事件や不思議な出来事を解き明かしていく、優しさあふれる捕物帖。
■感想
序盤では北一の境遇を中心として語られている。岡っ引きの見習いとして文庫売りをしていたが、親分がフグの毒に当たって死ぬ。後を継いだ者との折り合いが悪く北一は独立しようと考える。北一は貧乏ながらも親分の意思を継ぐために様々な動きをする。
おかみさんは目が見えないが音で全てを判断する。そして、北一からの話を聞くことで事件を解決していく。北一だけでなく長屋の管理人も飄々とした年寄りではあるが、良いキャラをしている。江戸時代の雰囲気の中で、北一がやさしさを見せながら事件を解決していく。
中盤から喜多次が登場してくる。正体不明で行き倒れていたところを、風呂屋に拾われ下働きをしていた男。北一が喜多次の父親の亡骸を拾い集め供養したことから、喜多次は北一に恩を感じて助けることとなる。この喜多次の存在が重要だ。
長屋の管理人が悪人たちに拉致された際には、皆が必死に探す中で、誰も見つけることができない。身代金を払うことを検討しはじめたころ、喜多次がひそかに北一に管理人の居場所を伝える。そして、喜多次はひっそりと悪者を退治し、消えていく。誰が助けたのか不明のまま、北一だけが真実を知る。
北一の周りには良い人物も多いが嫌味ったらしい人物や悪人も多数登場してくる。悪人たちはそれなりの報いを受ける。ある男が奥さんを亡くし、再婚しようとした。そのタイミングで自分は男の妻の生まれ変わりだと言う若い女が登場してくる。
普通では生まれ変わりなどありえないのだが、状況から真実味が増してくる。おかみさんはそれらを全て嘘だと見抜き、相手に嘘だと白状させるための方策を練る。このあたりは喜多次の暗躍があるにせよ、痛快なラストとなる。
新シリーズとして、期待せずにはいられない流れだ。
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