禁猟区 


 2023.2.9      娘のいる母親が俳優の卵と不倫 【禁猟区】

                     
禁猟区 [ 石田衣良 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
娘のいる母親が不倫をする物語だ。これまでの「娼年」「眠れぬ真珠」とは異なり、夫婦の関係が濃密に描かれている。ライターで幼稚園児の母親でもある文美子はママ友から誘われたギャラ飲みで俳優志望の夏生と出会う。文美子は禁断の道に入りこむ。

ただ、その時、同時に夫も浮気をしていた。お互い様ではあるが、夫の浮気に対しては腹立たしく思う文美子。家族を守るためにどのような行動にでるのか。男がやけに物分かりが良いかと思いきや、譲れない部分もある。夏生との不倫は続かないとわかっていながら、やめることができない。そして、崩壊する家族。結局は誰も幸せになっていないが、世間の不倫の結末は誰も幸せにならないのだろう。

■ストーリー
34歳、ライターの文美子。夫との関係は冷え切り、娘はかわいいが保育園で問題行動を起こしていた。ある日、文美子はママ友から、女性がお金を出して若い男性を「狩る」という「お茶会」に誘われる。乗り気でなかった文美子だが、そこで劇団俳優の夏生と出会い、彼の誠実さに惹かれていく。夫の愛人の来訪、半グレからの脅迫、変貌していくママ友。様々な出来事が降りかかる中、ふたりの関係は引き返せないところまで来てしまい……。『娼年』『眠れぬ真珠』に続く恋愛長篇。

■感想
若い俳優志望の夏生との不倫は確かに文美子からしたら新鮮な楽しさがあるのだろう。ライターとして成功し金に余裕がある文美子が若いつばめを飼うような感じに近いのかもしれない。作中では文美子の年収が夫を超えたために夫婦関係がぎくしゃくしたという描写もある。

すでに夫婦関係は崩壊していたのかもしれないが、子供の存在が家族を維持させていた。夫婦それぞれ、子供が大事だというのは理解しているが、自分の気持ちを抑えることができないのだろう。矛盾を感じるが、これが真の姿だろう。

文美子は自分が不倫しているにも関わらず夫の不倫の証拠をみて激怒する。さらには、夫の不倫相手が家にまで押しかけたりもする。ここで文美子は自分も不倫していることを告げ、あっさりと別れるのかと思いきや…。

思いとどまり、そのまま夫を許して夫婦関係を続けることになる。これはひとえに子供の存在があるからだろう。最後まで、子供の存在がなければすぐにでも別れていたふたりだというのはわかる。文美子の不倫が夫にバレ、そこから修羅場になる下りは強烈だ。

文美子は夫婦関係以外にも様々なトラブルに巻き込まれることになる。恐ろしいのはやはりママ友との関係だろう。表面上は繋がってはいるが、いざという時はあっさりと相手を裏切る。最終的には文美子ひとりが悲惨な結末を迎えているように思えてしまう。

夫と離婚し、離れて生活する際に、子供が大泣きをする。実は夫婦にとってこれが一番きついというのはわかる。子供の悲しむ顔を見たくない。子供を悲しませたくない。この思いが世間の夫婦の中で、家族関係を維持させる大きな要因なのだろう。

夫婦関係のリアルを感じることができる作品だ。



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